日本の技術力維持に向けた、三菱重工と国立高等機構の提携

2013年03月22日 12:14

 若年層の理科離れや工学部離れなどに起因し、日本経済の基盤であるものづくり産業の場で深刻な問題となっている技術者の育成や確保。さらに、近年増加しつつあるグローバル採用に代表される海外拠点にて活躍出来る人材の発掘。この2つを組み合わせた取り組みが、三菱重工業<7011>と国立高等専門学校機構との間で開始される。

 3月21日に両社は、包括的連携協定を締結したと発表。三菱重工と全国の高等専門学校(高専)が、インターンシップや講師の相互派遣、共同研究などに力を注ぐことにより、ものづくり若手人材の育成・強化を目指すという。

 今回の包括連携協定の内容は、「海外インターンシップの促進」「国内インターンシップの強化・促進」「講師の相互派遣」「共同研究の促進」の4項目。そのうち海外インターンシップは、三菱重工の海外拠点や現地工事事務所などで、高専の学生を毎年受け入れるもので、第一回目として今夏には、化学プラント建設工事サイトで実施。その他の連携についても、互いに協議しながら早い段階での実行を図るとのこと。

 本年度に創立50周年を迎えた高専は、15歳から5年間の一貫教育により実践的・創造的な技術者育成を行う高等教育機関として、経済協力開発機構(OECD)調査団の報告をはじめ海外からも注目されており、その存在は重要性を増している。一方の三菱重工は、CSR行動指針において、ものづくりに携わる「次世代を担う人の育成に貢献する」ことを宣言しており、若い人々のものづくり意識の高揚を目指した様々な社会貢献活動を展開。こうした両者の基本的考え方から、今回の包括連携協定が実現した。

 技術者の人材不足は、ものづくり産業のあらゆる場で発生している。今回の提携のような取り組みをどこまで広げられるか、注目が集まるところであろう。そして同時に、大手企業の経営不振等に伴い、多くの日本人技術者が海外企業へと流れていることや、海外企業との提携により日本の高度な技術が流出していることも大きな問題である。将来を担う技術者の確保と共に、こうした問題にも早急に対応する必要があるであろう。(編集担当:井畑学)