住宅メーカーだけではなく、有望な将来性に様々な企業が熱い視線を注ぐ「スマートハウス」。早期の市販化に向け、大和ハウスや住友林業などが活発な動きを見せる中、大阪ガスと積水ハウスが普及のカギを握ると思われる、画期的な居住実証実験を共同で開始した。
両社が行う実験は、電気と熱を効率的にマネジメントし、居住者の快適な暮らしと省エネを両立することができる「スマートエネルギーハウス」で行われる。奈良県王寺町に建てられたこの住宅は、既に2月1日から報道関係者に公開されており、同月5日からは大阪ガスの社員が実際に3年間居住し、様々な検証を行う。ここで両社の言う「スマートエネルギーハウス」とは、発電効率の高い次世代型の燃料電池(SOFC)と太陽電池によるダブル発電に蓄電池を組み合わせ、家庭内のエネルギー機器や家電製品を情報通信技術(ICT)でつなぐことにより、電気だけでなく熱も含めたエネルギーの最適化と省エネを実現する住宅のことだ。燃料電池から得られる”熱”も考慮しているという点において、一般的に言われている「スマートハウス」より一歩進んだ取り組みであると言える。
今回の居住実証実験の最大の特長は、住まい手の快適性や利便性を含めた検証を行うために、3年間に渡って実際に人が住む(家族構成3人)という点だ。そして実証実験の内容の特徴としては、エネルギーの最適制御による省エネ効果の検証に加え、近い将来普及が見込まれるEVの蓄電池を定置型蓄電池の代替えとして利用した場合の効果や、EVの充電にかかるエネルギー負荷まで含めたCO2排出量ゼロの実現を目指している事が挙げられる。また、住宅負荷(熱・電気)における創エネ機器出力のカバー率を示した”エコエネ率”をHEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)で表示させ、住まい手を効率的な生活行動へ誘引する効果の検証や、『電動シャッター・カーテン』・『自動水栓』・『キーレスエントリー』などの先進設備導入で利便性を向上させるとともに、その一部の機器をHEMSと連動させ冷暖房エネルギーの低減による省エネ効果の検証を行う事も挙げられる。
さらに、居住実験のメリットとしては、住まい手の行動観察を通じてHEMSの利用実態や利用後の意識・ライフスタイル変化の分析などを行う事が可能となる点も挙げられる。今回の実験について両社は「ユーザー目線でなければ意味がなく、そのための検証時間は惜しまない」という考え方を優先しており、各方面からの期待も大きい。
各メディアを賑わしている「スマートハウス」はというと”エコ”の印象が強く、市場に先行して参入した企業も、太陽電池と蓄電池を組み合わせることによる電力の最適化と省エネ・省CO2だけを重視した提案を行っているところが多い。しかし、肝心な住まい手が”使い勝手の良さ”や”快適さ”、そして”お得感がある”と感じられなければ本格的な普及は難しい。そこで、ITの進化と家電製品のネットワーク化による住まい手の快適性や利便性を自ら考え、判断し、行動する”賢い家”を”スマートハウス”と位置づければ、大阪ガスと積水ハウスの居住実証実験で得られる住まい手視点の検証データが、スマートハウス普及のカギを握ることになるのは間違いなさそうだ。