風邪を引いて、病院への通院や薬代などの治療費がかさむと、家計を圧迫することになりかねないだろう。事実、厚生労働省が発表した平成19年度国民医療費によると、風邪の治療にかかる医療費は4,000億円以上にものぼるという。また、抵抗力が弱い小さな子どもや、体力の衰えが目立つ高齢者、薬に対してアレルギーや副作用を持つ人などにとっては、風邪ひとつとっても深刻な疾患ともいえる。これらから、各機関・企業では効果の高い新たな薬、副作用の少ない薬の開発のほか、自然のものを活用した治療法などの研究が進められている。
このような研究を行う企業の取組み例のひとつとして、岡山県に本社をおく山田養蜂場のブラジル産プロポリスを使用した研究が挙げられる。同社はこのたび、ブラジル産プロポリスの継続飲用が風邪の治りを早めることを、ヒトによる試験で明らかにした。これは、ブラジル産プロポリス製品を使用する顧客より「風邪をひきにくくなった」という声が、近年多く寄せられるようになったことから、ヒトの風邪症状に対するプロポリスの有効性に着目し研究を開始した。
今回は、20歳から70歳までの成人男女59名を30名と29名の2グループに分け、一方には450mgのブラジル産プロポリスエキスを含むソフトカプセルを、もう一方にはプロポリスエキスを含まないソフトカプセル(プラセボ)を60日間継続して飲用させ、日誌によるアンケート調査を実施した。試験期間中、被験者は毎日風邪の自覚症状の有無を日誌に記入。また、自覚症状がある場合に限り、軽症から重症まで5段階に分けた自覚症状スコアを明記させた。そしてアンケートを元に、風邪が治るまでの日数と、風邪の自覚症状を示すスコア合計の中央値(スコアを大きさの順に並べた時に、中央に位置するスコア)を、プロポリスを飲用したグループと飲用していないグループで比較した。その結果、風邪が治るまでの日数は、ブラジル産プロポリスを飲用したグループでは平均2.0日、プラセボを飲用したグループでは3.2日となった。また、風邪の自覚症状である体のだるさを示すスコアもプロポリス群が圧倒的に小さいことが証明された。つまり、ブラジル産プロポリスの継続的な飲用は、体のだるさを軽減すると共に、風邪の治りを早めるといえる。
毎年訪れる風邪やインフルエンザの流行。年々新薬や民間療法などの開発が行われているが、予防の重要性は変わらない。そこに着目し、研究を続ける企業が今後増えていくことが望まれる。