プライベートだけでなく、初対面の相手にわずかな時間で好印象を与えなければならないビジネスシーンにおいても、エチケット、特に口臭のケアは大切な要素の一つ。ドラッグストアやコンビニエンスストアをのぞくと、口臭ケアを目的とした多数のエチケット商品を目にすることができるが、そういった商品の中にはマウスウォッシュを行ううがい薬のような薬用品のほか、”食べること”でケアを行う食品も多い。
そういったエチケット関連食品の市場規模は、どの程度の大きさでどのように推移しているのか。富士経済が作成した報告書「H・Bフーズマーケティング便覧 2010 No.1」によると、2001年の市場規模が約176億円、2005年が約260億円、2009年が335億円(見込み)と、少しずつではあるが拡大傾向が見られる。口臭ケアに対する人々の意識が徐々に高まってきている、と言えるのではないだろうか。
そんな中、「ウォータリングキスミント」や「BREO」といったエチケット関連食品を自社でも販売している食品大手の江崎グリコ<2206>は、20~50代の男女を対象に行った口臭ケアに関する独自調査にて以下のような調査結果を得た。それによると、自分の口臭を気にしている人は全体の90%以上に上り、中でも特に”モーニング・ブレス”と呼ばれる起床時の口臭を気にしている人が多い(全体の73.7%)という。さらに、「自分の口臭の原因が何だと考えているか」という質問に対する回答には、最も多かったものから順に「歯垢(14.3%)」、「歯周病・歯肉炎(13.8%)」、「ニオイの強い食べ物(12.8%)」が並ぶ。
そういった中で同社が目をつけたのは、舌に付着する汚れ「舌苔(ぜったい)」だ。舌苔とは、食事をした際の食べかすや口内ではがれ落ちた細胞が舌の上に堆積したもので、口臭の原因の60%を占めるとも言われている。舌苔は唾液の分泌が少なくなる睡眠時に最も堆積しやすいため、それが理由で起床時に口臭が強くなるという。
しかし、先述の「自分の口臭の原因が何だと考えているか」という質問に対し、「舌の汚れ」と答えた人はわずか9.4%(全体の5番目)。さらに、「舌の汚れに対する対処の頻度は」という質問には、57.9%が「特に何も対処をしていない」と答え、「毎日」から「月に一回未満」までを含む「対処を行っている」と答えた人の中でも、適切な方法で舌の汚れに対処している人は10%程度にとどまった。この調査結果では、舌の汚れに対する人々の意識が低いことがうかがえる。
舌の汚れに対するケアの方法としては、ドラッグストアなどで販売されている専用のブラシで直接汚れを落とすことや、舌や口中ケアのためのタブレットで汚れを取ることなどのほか、食事の際によくかんで食べることなども挙げられる。特に、キウイフルーツやパイナップルは舌苔の主成分であるたんぱく質を溶かす酵素を多く含んでいるため、舌苔に対して大きな効果を発揮するそうだ。
そういった調査結果を踏まえて考えてみると、最も舌苔が堆積している朝に専用のブラシや「BREO」のようなタブレットで舌ケアを行い、日中は手軽なガムやキャンディ、フィルムによって口内にマスキングを行うなど、”口臭ケア”とひとまとめにせず、時間や目的に応じて使い分けをしてみるのも良さそうだ。
(編集担当:上地智)