近年、よく聞かれるのが「環境配慮型都市」スマートコミュニティ。これは再生可能エネルギーの活用、電力の有効利用、また、都市の交通システムや住民のライフスタイルを複合的に組み合わせた社会システムのことを指している。
現在、地球温暖化や都市部への人口集中、高齢化の進展など様々な社会問題への解決策として、このスマートコミュニティ構築の必要性が高まっており、同市場の世界累積市場規模は、2030年に1,000兆円超と予測されている。また、日本でも昨年の東日本大震災の影響によりエネルギー問題が注目されており、持続可能な街づくりとしてスマートコミュニティの取り組みが各地域で推進されている。
そのような中、富士通と三井物産は共同でスマートコミュニティ事業を開発・運営することに合意し、両社合弁による新会社「フューチャーシティソリューションズを設立した。
これまで富士通は業種・業務のシステム構築やサービス提供で培ったICTソリューションの実績と、最新のテクノロジーを駆使して、ICTによるスマートコミュニティの実現と地域活性化に取り組んでおり、その取り組みは海外でのスマートコミュニティ計画にも活かしていきたいと考えているようだ。一方、三井物産は、スマートコミュニティの実現には様々な利害関係者を纏める総合調整力と、エネルギー、交通、建物といった異なる分野の技術を束ねる高度なエンジニアリング力が重要であると認識し、世界的なエンジニアリング企業英Ove Arup and Partners International Ltd.と昨年合弁会社を設立。その先進ノウハウを活用すべく、国内外で産官学連携コンソーシアムを立ち上げ、スマートコミュニティという新事業分野創造に積極的に挑戦している。
両社は、都市を構成する交通・建物・エネルギー活動を有機的に繋ぐICTノウハウがスマートコミュニティ実現には不可欠であるとの認識に至り、両社がこれまで培った知見を活かし合弁会社を設立するに至ったという。
新会社であるフューチャーシティソリューションズでは、富士通が強みとするICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)によるサービス企画力と三井物産が強みとする幅広い事業チャネルおよび事業展開力をベースにスマートコミュニティ事業に邁進していく方針で、具体的には富士通の開発するクラウド型のエネルギーマネジメントソリューションを三井物産が開拓した事業チャネルを通じて全国の住宅に提供することでHEMS(家庭におけるエネルギーの管理を行うシステム。住宅に設置されたエネルギーを消費・創出する機器や、その量を測るメータ機器などをネットワークで接続し、稼動状況監視や遠隔操作での自動制御などを可能とする)の普及を推進。その上で、本ソリューションにより得られたデータを収集・蓄積することで医療や福祉、行政などの新しい住民サービスの創出を目指し、将来的には、地域エネルギーマネジメントサービス事業の実現につなげていく考えだ。
2010年4月には、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)を事務局として、民間企業・団体と経済産業省からなる官民協議会「スマートコミュニティ・アライアンス」が設立されている。この協議会は、再生可能エネルギーの大量導入や需要制御の観点で次世代のエネルギーインフラとして関心が高まっているスマートグリッド及び社会システム(スマートコミュニティ)やサービスの国際展開、国内普及に貢献するため、業界の垣根を越えて経済界全体としての活動を企画・推進するとともに、国際展開に当たっての行政ニーズの集約、障害や問題の克服、公的資金の活用に係る情報の共有などを通じて、官民一体となってスマートコミュニティを推進するための機構。現在(2012年12月10日現在)401社が会員となっており、富士通も三井物産も加盟している。
今後、世界規模でも拡大していくと予測されるスマートコミュニティ構想だが、一社だけの力では大きく動かない事業も多い。今回のように大手商社とメーカーがそれぞれの得意分野を生かしながら手を組むことにより、2013年以降の飛躍的な広がりが期待できるのではないだろうか。