昨年末、デンマークのコペンハーゲンで気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)が開催された。その中で紹介された日本の「一村一品・知恵の環づくり」事業は、参加した各国の関係者から強い関心を集めていた。
この「一村一品・知恵の環づくり」事業は、環境省と地球温暖化防止推進センターが主体となって、地域の創意工夫を活かした取り組みや地域温暖化防止に向けた対策を都道府県ごとに取りまとめ、地域の優れた温暖化対策を全国に広げていこうというもの。2007年から始まったこのプロジェクトには、毎年、全国各地のNPOや自治体、市民、企業などから多数の応募があり、中でも優秀な取り組みは都道府県代表として全国大会に選出される。
この事業はスタートしてから3年余りが経過し、地域単位の温暖化への取り組みが徐々に盛り上がりを見せ始めていたが、昨年実施された新政権による行政刷新会議の事業仕分けでは、温暖化防止の効果が不明確だという理由で廃止に追いやられてしまった。COP15の参加国からも高い評価を得、今後の日本が環境技術だけではなく、ソフト面においても世界の温暖化対策を牽引するきっかけのひとつになるのではと大きな期待を寄せられていただけに、このプロジェクトに関わってきた各関係者は落胆の色を隠せない様子だ。
そんな中、今年で最後となる「ストップ温暖化『一村一品』大作戦 全国大会2010」が、2月13日~14日に開催された。今回も、公募により各地域から1,394件の取り組みが集まり、その中から選りすぐりの47代表が全国大会にてプレゼンテーションを行い、審査の結果、最優秀賞が1団体に、金・銀・銅賞が各1団体に送られた。
見事に最優秀賞を受賞したのは、鳥取県代表である北栄町の取り組み「風が運ぶ贈り物~小さな町に新エネ・省エネを詰め込んで~」。北栄町の海岸沿いに並ぶ、自治体直営では国内最大規模となる大型風力発電施設「北条砂丘風力発電所(1,500kW×9基)」は、今や鳥取県の風力発電開発の原動力。多くの町民に地球温暖化防止に対する意識を浸透させた点等が高く評価された。
また、金賞は、東京都から排出される使用済み油を回収し、エネルギー化・リサイクル化して行こうという取り組み「東京を油田に変える!~TOKYO油田2017プロジェクト~」。銀賞は、京都府代表である長岡中央商店街の手作りLED街灯でCO2を9割も減らすという取り組み「商店街の”まちあかり”で子どもたちの未来を照らせ」が受賞している。さらに、銅賞には、大阪府代表の積水ハウス株式会社 による「『新・里山』都会の真ん中で自然体験」が選出された。
中でも、積水ハウスの「新・里山」での取り組みは、銅賞ではあるものの大手の民間企業がこのような賞を受賞することは珍しいだけに各方面から注目を集めた。同社は2001年より推進している生物多様性の保全に向けた取り組み「5本の樹」計画に基づき、2006年に本社がある新梅田シティ敷地内の公開空地(約8,000平方メートル)に里山を造成。草花はもちろん、水田や野菜畑、材木林、竹林、茶畑などを配することで、都会の真ん中で自然と触れ合える場所をオフィスワーカーや地域住民に提供している。2007年からは毎年、地元の幼稚園児や小学生を対象に無農薬有機栽培での米や野菜などの体験を実施するなど、「新・里山」を活用した教育支援活動や市民団体の学習会などを企業が中心となって実施している点等が高い評価を得たのだろう。
事業仕分けにより「一村一品・知恵の環づくり」事業は廃止されることになってしまったが、たとえ国のバックアップがなくなったとしても、民間の企業や各団体、地域住民が協力しあって、世界に誇れる地域のオリジナリティを生かした温暖化対策事業を今後も続けて欲しいものだ。
(編集担当:北尾準)