派遣社員が抱える直接雇用に対する不安

2013年07月11日 18:51

 アデコ株式会社が、2012年11月に働く女性を対象に実施した「幸せ度」についてのアンケート調査によると、派遣社員と正社員とでは、派遣社員の方が正社員より幸せを実感している人が多く、総合的な幸せ度を100点満点中で表したところ、派遣社員の平均点は65点、正社員で61.6点であった。また、90点以上の高得点を付けたのは、派遣社員が39人だったのに対し、正社員では22人にとどまった。

 派遣社員といえば、派遣切りや派遣村のイメージが強く残っている。08年当時、派遣切りに遭った人たちが、こぞってメディアに対し、「どんな仕事でもいいから職に就きたい。でも、派遣だけは二度とやりたくない」などと発言していたのは、多くの人の共感を呼び、派遣は悪というようなイメージが付いた。あれから約5年、現在、派遣社員として働く人たちは、どのようなことを考えているのだろうか。

 一般社団法人 日本人材派遣協会が発表した「2012年度派遣スタッフwebアンケート 1万人調査」によると、現在もしくは過去において派遣として働いたことのある人のうち、約8割が派遣以前に正社員としての勤務経験があるという。正社員を辞めた理由については「体力的・精神的な負担が多かったため」という回答がトップであり、派遣社員になって「生活の充実感」に満足していると答える人は約6割にのぼり「これからも派遣として働ける限り働き続けたい」と考えている人も4割以上を占めていることがわかった。また、時給については、平均1,430円であり、全国の短時間労働者の平均時給を約4割上回っているという。一方、派遣社員のマイナス面として、ひとつの派遣先で働ける期間に上限があるということに対し多くの人が「給与が上がりにくい」、「生活設計が立てにくい」といった声を上げている。また、派遣社員の約4割が派遣先より直接雇用を打診されているが、そのうち5割以上が賃金や体力的・精神的な不安などにより打診を断ったという。

 労働者派遣法の改正などの動きをみる限りでは、まるで派遣社員の多くが、直接雇用を望んでいるかのように思われ、直接雇用は派遣社員にとっての朗報のように扱われているが、現実は、派遣として勤務できる期間に上限があることを不満に持ち、直接雇用より派遣という働き方を望む人も多数いることが分かった。(編集担当:中村小麦)