鹿島がANC技術で山岳トンネル工事発破音低減に成功

2012年09月06日 11:00

 山岳トンネル工事においては、発破時に発生する騒音を最小限にする対策が、周辺環境への配慮からも非常に重要だといわれている。これまで、発破騒音を低減する唯一の方法として防音扉が用いられてきたが、防音扉は、主として高周波成分を低減するパッシブ型の防音対策技術であり、発破音の主成分である低周波音を十分に減衰させることは困難だった。低周波音は、減衰しにくく、遠くまで伝搬するため、窓ガラスや扉のがたつきが発生するなど、周辺への環境問題を引き起こすケースがあったという。

 一方、騒音と逆位相の音を解析によりアクティブに発生させ重ね合わせることで騒音を低減させる「ANC技術」は近年、様々な分野で適用。ANCはヘッドホンのノイズキャンセラー技術として注目を集め、近年では、工場等の排気ダクト音や自動車のマフラー音の低減など、「周期的な音」を対象として適用が進んでいる。しかし、トンネル工事の発破音は、周期的ではなく突発的に発生し、低い周波数域を含んだ極めて大きな音であること、また、日々変化する工事現場という不特定な場所でANCの構成機器を高い精度で同じ位置に設置することが難しいこと、あるいは、火薬量やトンネル長などの諸条件から発破音自体が変化してしまうなどの条件から、トンネル現場でのANCの適用は困難であると考えられてきた。

 そのような中、鹿島は、山岳トンネル工事における発破騒音の低減に対して、アクティブノイズコントロール(ANC)技術を国内で初めて実現場に適用し、騒音低減性能として、100Hz以下の帯域において5~10dBの低減効果を確認したという。

 同社ではこれまで数多くのトンネル現場で実発破音を取得し、解析するとともに、ITCの発展によってより高速な制御が可能となってきたANC技術の発破音低減対策への導入を検討。技術研究所での模擬実験で効果を確認し、このほど、四国地方の山岳トンネル現場にて、ANCシステムを構築、適用した。その結果、100Hz以下の低周波帯域において、5~10dBの低減効果を取得。また、発破音の初動時からANCの低減効果が認められ、発破音のもう一つの特徴である衝撃音(急激な立ち上がりで大きく変化する音)に対しても十分な効果があることが分かった。

 今後も同社は低減効果の拡大を図り、全国のトンネル工事現場に適用して、周辺環境への影響を更に低減するための技術として提案、実施していく方針だという。