再生治療の一般医療化目前か ニプロが国内初の再生細胞医薬品を事業化

2014年05月06日 08:45

 脳梗塞や事故などによる脊髄損傷の後遺症で苦しんでいる人は多い。このため、破損した細胞を再生させる再生医療の一般化が待たれている。このためiPS細胞やES細胞そして話題のSTAP細胞などが注目を集めるのだ。しかし、なかなか実用化に至らないのが現状だ。

 こうした中、ニプロ<8086>は28日、札幌医科大学の「脳梗塞及び脊髄損傷の治療に用いる自己骨髄間葉系幹細胞」の特許について、研究成果を全国への保険診療への展開を見据え、再生医療医薬品の製造販売を行うことを目的に、ライセンス契約を締結したと発表した。

 今回の特許ライセンス契約は、札幌医科大学における独自の研究成果を元に純国産の細胞医薬品を開発し、薬事法に基づく再生医療分野での医薬品としては国内初の製造販売をニプロが行うことを予定するもの。

 この特許は、患者自身の骨髄に含まれる間葉系幹細胞を体外で約 1万倍に増殖させ、その細胞を患者の静脈から点滴の要領で投与する治療にかかるもの。患者自身の細胞を用いるため副作用が起こりにくく、外科的手術を必要としない点で画期的だという。

 間葉系幹細胞は、神経や血管などに分化する能力をもった幹細胞で、この再生治療では自己の間葉系幹細胞が損傷した脳神経や血管、中枢神経を修復することで、脳梗塞や脊髄損傷の後遺障害に伴う神経症候や機能障害の改善、および要介護度の改善が期待できる。

 札幌医科大学では既に、脳梗塞患者に対する医師主導治験(第Ⅲ相試験)を2013年2月に独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)に届け出、現在、附属病院において治験を実施している。また、昨年の12月には、脊髄損傷患者に対する医師主導治験(第Ⅱ相)も開始し、再生医療分野において国内初となる細胞医薬品の実用化に向けた研究を進めている。

 同社がこれまで培ってきた医療機器・医薬品開発の技術とこの特許を活用し、再生医療分野では国内初の細胞医薬品の事業化を推進し、この再生医療の保険診療への道を開く。多くの患者を後遺症から救えるよう、両者で協力し再生治療の一般医療化を目指す。(編集担当:慶尾六郎)