「脱・東京」が加速中? 企業が続々と首都圏を去る3つの理由と「戦略的移転」の実態

2026年02月14日 12:48

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首都圏からの「転出超過」が4年連続。新宿から大宮へ移り面積8倍を実現した企業や、淡路島、静岡へと拠点を移す人気アニメ制作会社まで

 かつては「成功の証」であった東京都心の本社ビル。しかし、オフィス賃料の高騰や働き方の変化、災害リスクへの懸念などから、今、多くの企業が東京を離れ、新たな拠点を求めて動き出している。帝国データバンクが1990年から実施している「首都圏本社移転動向調査」の最新版(2024年発表)の調査報告によると、首都圏から地方へ本社を移転した企業は過去最多の363社を記録。転入企業数を差し引いた「転出超過」は4年連続となっており、企業の「脱・首都圏」トレンドが浮き彫りになっている。

 企業はなぜ、東京を去ろうとしているのか。

 主な理由と考えられるのはまず、圧倒的なコスト削減だろう。長引く物価高も相まって、都心の賃料は上昇を続けており、固定費が経営を圧迫。郊外や地方へ移ることで同じ予算でも数倍の面積を確保できる上、将来的なコストダウンも期待できる。

 また、深刻な人手不足の中、通勤ストレスの緩和や「豊かな住環境」を提供することが、優秀な人材を引き止める強力なカードになっていることも大きい。東京から離れることで、DX化と働き方改革の両立が可能なのだ。さらに、BCP対策(事業継続計画対策)としても有効だ。本社機能を移転、分散させることで、首都直下型地震などの災害に備え、事業継続性を高めることができる。

 こうした流れの中、単なるコストカットを超えた戦略的な移転事例が注目を集めている。

 その一例として、木造注文住宅「アキュラホーム」を展開するAQ Groupの事例がある。同社は2024年、東京・新宿から埼玉県さいたま市の大宮エリアへと本社機能を移転。特筆すべきは、その新社屋で、日本初となる「普及型純木造8階建てビル」を自社技術で建築したのだ。さらにオフィス面積は新宿時代の8倍以上という。そして、8000㎡を超える広大な敷地を活かし、本社機能と、ショールーム、体験施設などを一体化した仕組みを構築。単なる事務スペースでしかなかった本社を「技術を磨き、顧客と繋がる戦略的拠点」へとアップデートさせたのだ。東京・新宿というブランド以上に、実利と自社のアイデンティティを追求した、次世代の理想的な本社像といえるのではないだろうか。

 また、パソナグループも、2020年に本社機能の一部を淡路島に移転している。

 同社は、1995年の阪神淡路大震災での支援をきっかけに淡路島と親交を深め、2008年からは農業・観光事業で地域貢献を続けてきた。そんな中、2020年以降のコロナ禍を契機に、テレワークの普及と東京一極集中の問題解決のため、本社機能の一部移転を決定。これまでも自然を活かしたテーマパークの立ち上げや、県立公園のプロデュースなど、パソナは淡路島で多くのプロジェクトに携わっているが、その経験を活かしつつ、淡路島が持つ地域性や地域の課題をITを活用して解決し、雇用も生み出す取り組みを続けている。

 また、若い世代にも注目されているのが、2022年に静岡市に制作スタジオを設立したアニメ制作会社シャフト(Shaft Inc.)だ。「魔法少女まどか☆マギカ」や「〈物語〉シリーズ」などの人気アニメの制作でアニメファンや学生からも絶大な支持を得ている同社。本社移転ではないものの、アニメーション制作会社が静岡市に進出するのは初めてということで、大きな注目を集めた。首都圏以外でのアニメ制作の可能性が広がれば、日本のポップカルチャーをさらに進化させる大きな一歩となるだろう。

 情報が集まる東京にいないと勝負にならないと言われた時代は過ぎ去り、今や東京は「必須」ではなく「選択」の時代になりつつある。企業のDX化も進み、物理的な場所の制約も消えつつある中、自社の強みを最大化できる場所を選び、コストを「体験や研究」へと再投資する「戦略的な東京ばなれ」の動きは、今後益々、加速していくのではないだろうか。そしてそれは、日本の企業文化をより多様で強固なものへと変えてくれるはずだ。(編集担当:石井絢子)