次世代住宅として注目を集めるスマートハウスだが、大きく市場が伸びていく可能性をビジネスチャンスと捉え、住宅メーカー以外の異業種の参入も始まっている。
2011年11月の業務提携で業界を驚かせたヤマダ電機とエス・バイ・エルが今年の4月、遂にスマートハウス市場に本格的参入をした。昨年末にインターフェイスが規格統一された「HEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)」に関連する企業はベンチャーも含め戦国時代になることは予測されていたが、住宅商品自体を異業種であるヤマダ電機が販売するという、新たなビジネス戦略の登場は、これからの住宅業界に大きな影響を与える可能性を十分に秘めている。
家電量販店の業界で急成長を遂げたヤマダ電機の強さは、その圧倒的な販売力にある。あっという間に業界1位に上り詰めた同社は、次々と大型店舗を出店し、都心の一等地にも進出、その販売力の強さを消費者に見せ続けている。スマートハウスはエコであると同時に、最適なエネルギー管理を行う住まいである。家電用を中心とした住宅内で使用される電力を無駄なく使用できる環境を整える”家”なのだ。ならば、その家電に精通した同社はスマートハウスと繋がる。消費者は住宅メーカーに対し、家を建てるプロとして認識していても、暮らすための道具である家電のプロとしては見ていない。今回ヤマダ電機は家を建てるプロを傘下に置いたことで、HEMS制御のスマート家電が普及期を迎えた時、住宅メーカーにとって脅威になるかもしれないのだ。
そんな市場での異業種参入が脚光を浴びる中、”家”づくりのプロもだまってはいない。
住宅メーカー大手の住友林業は今月2日、同社のスマートハウス「スマート・ソラボ」の新商品を発表した。EV(電気自動車)のバッテーリーを蓄電池として、家庭に供給することを可能にした「V2Hシステム」を戸建住宅で初めて採用、また、家庭用の蓄電池システムを2種類用意し、住まい手が購入時に選択できるようにするなど、このスマートハウスには新しい試みも導入されている。
一方、中堅メーカーや地元密着型の工務店も低価格のスマートハウス販売という大手には実現できない部分を中心に、市場争いをしてきた。しかし、ヤマダ電機の販売する「Gスマート」は低価格帯のモデルでもあり、更なる差別化が必要となってきている。
例えば、アキュラホームが販売するスマートハウス「ひふみ」は非常用水や打ち水に使用できる井戸掘り工事を付加したり、光熱費を年間プラス収支5万円(売電の効果により)にすることを可能にできるなどユニークな特徴を打ち出している。
スマートシティなどの計画にも見られるように、今後は様々な業界が入り乱れて、スマートハウス市場は活性化する可能性が非常に高い。しかし、スマートハウスの肝であるHEMS制御に対応した家電製品の登場はまだまだ先のようだ。ちょうど1年前に立ちあがった共同検討体制である「HEMSアライアンス」のその後の状況は、その後全くと言って言い程何も聞こえてこない。当時、3年以内に何らかの成果を残すとしていた時点で、随分時間が掛かるとは思っていたが、盛り上がってきているスマートハウスの市場とは温度差がかなりあるようだ。2年後、HEMS対応のスマート家電の話題で家電業界が賑わっていることを願いたいものだ。