大企業志向の反動?学生たちの「身の丈就活」

2013年01月10日 11:08

 大学進学率が50%を超えた今、すべての大学生を十把一絡げに論じることはできないが、それなりのトレンドはある。たとえば昨年ニュースになったのは「身の丈就活」。マイナビによると、2013年卒の大学生の約7割が地元での就職を希望していた。データからは学生たちが、就職活動を進めるにつれて、∪ターン・地元志向を強めていく様子が伺われる。特に地元で進学した女子は「勤務地」を選択する割合が最も高く(31.4%)、働く場所へのこだわりが強い。地域別では北陸や北海道出身者では「勤務地」を優先する割合が高かった。

 学生たちの間では、都市の大企業ばかりではなく地元の中小企業も視野に入れた就活が定着してきたようだ。リクルートワークス研究所の発表では、昨年、従業員数1000人未満の中小企業を志望する学生が大企業の志願者数を14年ぶりに上回った。

 このような傾向をマイナビは「身の丈就活」と名付けたが、この表現には疑問を感じる。まるでこれまでの就活が「身の丈就活」ではなく、背伸びしてまで大企業を受ける無謀な学生が多かったというようなニュアンスがあるからだ。従来の学生は「身の丈に合わない大企業」ばかり受けていたが、ようやく自分の「身の丈」=身のほどに気づいたということだろうか。

 しかし、学生に「身の丈」とは程遠い「大企業志向」が広まったのは、リクナビやマイナビをはじめとする大手就職情報サイトの影響ではないだろうか。大企業の志願者数が増え始めた00年代は、インターネット経由の就職活動が主流となった時期と重なる。ネット上では全ての応募者が平等に扱われ、クリックひとつでどんな会社にもエントリーが可能だ。こうして一部の大手企業に大量の応募者が殺到するようになった結果が、「学生の大企業志向」である。

 かつて学生たちに大企業への幻想を広めた就職情報サイトが、「身の丈就活」という表現で「大企業志向」の学生を批判している。不思議な話だ。