2008年に環境省が制定したエコ・ファースト制度とは、各企業が環境大臣に対して約束した地球温暖化対策や生物多様性保全、資源リサイクル対策などの取り組みに対し、環境大臣が「先進的で独自的でかつ業界をリードするような事業活動を行なっている」とし、その業界における環境トップランナー企業であることを「エコ・ファースト企業」として認定する制度だ。
環境省は、エコ・ファースト制度や認定企業の取り組みや技術力等の認知度向上を図るとともに、11月30日からパリで開催される「COP21」が開催される時期に、目標年次の2030年度に向けて、より一層の地球温暖化対策、低炭素社会の構築を進めることをねらい、25日に「第1回エコ・ファーストシンポジウム」を東京都内で開催した。テーマは「これからの低炭素社会~エコ・ファースト認定企業の挑戦~」で、環境先進企業の取り組みや有識者のコメントが発表された。
シンポジウム冒頭では、「エコ・ファースト企業」で構成する「エコ・ファースト推進協議会」和田勇議長(積水ハウス代表取締役会長兼CEO)が挨拶に立ち、「2030年までにCO2排出量を13年比26%削減する政府目標の達成に向けてより一層の地球温暖化防止対策、低炭素社会の構築が重要事項だ。その一翼を担うことが期待されるエコ・ファースト企業は、この分野におけるリーディングカンパニー。39社のエコ・ファースト企業による取り組みや、将来に向けた提案が日本を牽引する」と述べた。
第1回となる今回は、積水ハウスや富士通、ノーリツや戸田建設など、業界を代表する9社の環境対策への取り組みが発表された。
富士通は「気候変動緩和と適応への取り組み」が、戸田建設は「環境対応型最先端オフィスビル」建設で、コメンテーターの後藤敏彦氏((サステナビリティ日本フォーラム 代表理事)、森摂氏(株式会社オルタナ 代表取締役 編集長)から高い評価を得た。
積水ハウスは、2009年から創エネ設備(太陽光発電や燃料電池など)搭載の環境配慮型住宅「グリーンファースト」を供給し、現在では新築住宅の85%に普及していると説明。加えて、政府が2020年に政府が新築住宅の50%の普及を目指しているゼロエネルギーハウス(ZEH)を、すでに2013年に「グリーンファースト ゼロ」として発売を開始しており、現在は新築住宅の74%がZEHだと発表した。同社は家庭用燃料電池も累積で36,350台を設置しており、まさにZEHのトップランナーと言える。一般消費者への訴求ポイントは、地球温暖化への意識はあるが“まだ消極派”の5割を超えるユーザーに、「経済的で、簡単で、快適な暮らしが達成でき、“そのうえで環境に優しい”住まい」を訴求するという。コメンテーターの後藤敏彦氏は「(住宅という大きな買い物をする)消費者の意識に訴え、“安全”や“快適”に変換して省エネ住宅普及を進めた成果は大きい」と評価した。
ここで発表された内容のすべてを紹介するのは難しいが、シンポジウムの冒頭において鬼木誠環境大臣政務官が触れているように、「環境と産業が互いに補完し合い、好循環をもたらすような社会の実現」が低炭素社会の実現に不可欠である。環境に良い企業に投資を促進する、環境に良い商品を使う・買う、その結果産業も促進されという好循環を作りだし、環境への取り組みを先導する一般消費者や企業に対する利益や恩恵を実現することが求められる。(編集担当:吉田恒)