全国の自治体で、上水道料金の大幅な値上げが相次いでいる。値上げに踏み切る最大の理由は、水道施設の老朽化だ。日本国内に張り巡らされた水道管約61万kmの多くは高度成長期に整備されたもので、法で定められた耐用年数の40年を過ぎた管路は、なんと約3.8万kmにも及ぶ。
耐用年数を超えた水道管を使い続けると、破裂事故や漏水事故等の被害の原因となる。実際、年間で1200件を超える水道管の破裂事故や、下水道の陥落が年間4700件も起こっており、事態は深刻だ。
しかしながら、水道管は簡単に修繕できるものではない。老朽化した水道管の更新や耐震化にかかる費用は1キロにつきおよそ、1億円から2億円もかかってしまう。財政事情から正規の耐用年数で更新できない自治体も多く、費用の捻出に頭を抱えているのが現状だ。
水道インフラの崩壊は、国民の生命をも脅かす大問題。水道料金の値上げも已む無しとはいえ、長崎県島原市の34.5%を筆頭に、埼玉県秩父市の17.5%、近畿の水瓶琵琶湖を擁する滋賀県栗東市でも平均7.5%など、全国各地でどんどん大幅な値上げが実行されており、家計や企業の経費に大きな打撃を与えている。
そこで今、環境と家計節約の両方の目的から、節水対策への注目が高まっている。
東京都水道局の調べによると、日本の一般家庭において、もっとも水を使う場所はトイレの28%で、家庭の水道使用量の3割近くを占めている。ついで、風呂(24%)、炊事(23%)、洗濯(16%)、洗顔その他(9%)となっている。
これらに共通する簡単な節水方法は、電化製品の節電と同じく、最新の器具に交換して使用することだ。
例えば、トイレ。40年前の水洗トイレが1回に必要とする洗浄水量はなんと20L。およそ10年前のものでも6Lの水を必要とするらしい。ところが、TOTO<5332>の最新トイレでは3.8Lにまで削減することに成功している。同社の調べによると、日本の水洗トイレの平均的な水量13Lのタイプと比較すると、年間で約75%の節水、240Lのお風呂の水、約236杯分もの節水になるという。もちろん、トイレだけでなく、水量を調節できるシャワーヘッドや、泡切れの良いエコ洗剤などの節水グッズを使うことでも、節水は可能だ。
一方、「溜めて使う」節水も話題になっている。身近なところでは、歯磨きや洗顔の際に水を流しっぱなしにするのではなく、洗面器に溜めたり、コップに汲んだりするだけで、10分の1程度の節水が可能だという。一回あたりの水量は少なくても、年間になると大きい。
また、溜めて使うといえば、自治体の施設や企業などで導入が増えている「雨水タンク」や、木造住宅メーカーのアキュラホームが展開する「井戸のある家」も興味深い。近年、災害時の断水時の非常用水として井戸の利用が見直されているが、災害対策だけでなく、災害時にはトイレに流す水に使うこともでき、災害時以外でも打ち水や草木の水遣りなどに使え、節水にもなる。
井戸水は一年を通じて水温が15度程度と一定なので、水道水に比べて夏は冷たく、冬は暖かく感じる。もちろん、災害時だけでなく、庭の水やりや打ち水、冬場は積もった雪を溶かしたりと、様々な活用方法がある。もちろんその分、水道代の節約にもなる。
節水することで水道使用が減ると、徴収できる水道料が減ってしまうので、ますます水道料金が高くなってしまうのではないかと懸念する声もあるが、たとえ水道料金が倍に跳ね上がったとしても、無駄な水道利用を半分に減らせば、現状と変わらない。上手に節水対策に取り組んで、水道料金の値上げに備えたいものだ。(編集担当:藤原伊織)