EVの使用済み電池を再利用した大型蓄電池設備 鹿児島で住友商事らが実証事業開始

2015年12月02日 07:04

 鹿児島県薩摩川内市と住友商事<8053>は、鹿児島県薩摩川内市甑島に建設中の、電気自動車(EV)の使用済み電池を再利用した大型蓄電池設備(EVリユース蓄電池システム)を完工した。「甑島蓄電センター」の名称で運用を開始し、自治体が中心となって離島に再生可能エネルギーを普及させるための共同実証事業を進める。

 この事業は、離島が直面する再エネの課題を解決する自治体モデルケースの確立を目指している。事業では、EVリユース蓄電池システムを段階的に電力会社の系統へ接続させ、甑島に点在する複数の再エネをひとつの蓄電池でまとめて安定化し、島内にできるだけ多くの再エネを導入する検証を行う。

 「甑島蓄電センター」は、電力会社以外の事業者が蓄電池を単独で電力系統につなげる国内ではじめての事例になるという。事業の実施にあたっては、九州電力<9508>からの技術協力および助言を受け、系統に接続する蓄電池の安全な運用方法や蓄電池の効果を見極めながら、自治体モデル事業としての運用ノウハウを構築する計画。

 今後の計画のなかで、経済性の高いEVリユース蓄電池システムを用いた低コスト事業モデルを確立し、将来は、補助金に頼らない再エネの普及環境整備を目指す。まずは、甑島蓄電センターを通じて複数の再エネ事業者に対する電力安定化サービスを提供し、持続的に再エネ導入環境の拡大を後押ししていく考えだ。

 EVリユース蓄電池システムは、2013年に大阪夢洲において、住友商事が世界に先駆けて構築したもの。これまで2年間の運用を経て信頼性が確認されており、今回の事業ではさらに規模を拡大して、初めて電力系統のなかでの運用を開始する。いったんEVで使われたリユース蓄電池でも、新品と同様に安定的な電力を甑島全島に供給できるため、経済的な蓄電池システムとして、再エネ導入に課題を抱える離島や本土の地域などへの採用が期待されるとしている。

 薩摩川内市は、2013年3月に策定した「次世代エネルギービジョン及び行動計画」において、次世代エネルギーを活用した街づくりを推進している。この事業は、計画の重要なステップとなる事業として、甑島へ再エネ接続環境を整備するとともに災害に強い多元的な電力供給インフラを構築することを目指している。さらに、EVのリユース蓄電池を採用することで、新しいエネルギー関連産業の創出によって地域経済の活性化につなげるとともに、甑島ブランドを向上させ、観光振興にもつなげていく考え。(編集担当:慶尾六郎)