不景気という流れの中で、大きく踊る文字「低価格」。安倍政権が誕生し、アベノミクスと騒がれ、期待もされてはいても、未だ不景気感が世の中を支配し続ける中、やはり低価格商品は消費者の間で根強い人気を誇っている。その代表的なものは何といっても100円均一ショップ、いわゆる「100均」だろう。
100均は、意外なことにバブル景気後に発生したものではない。バブル以前、しかもバブル景気が始まったとされる1986年の前年の85年、有限会社ライフの創業者・松林明氏が愛知県春日井市に「100円ショップ」という名の店をオープンしたのが、固定店舗による100円均一店のはじまりだといわれている。
その後、バブル崩壊後のデフレーションなどともあいまって「ザ・ダイソー」「キャンドゥ」「セリア」「ワッツ」などをはじめとする数多の100均業者が生まれ、爆発的に店舗数が増加し、「不況時代の成長業界」とも称されるまでになった。
100均の最大手「ザ・ダイソー」でおなじみの大創産業の売上高は、2012年3月期で3415億円を突破。国内の店舗数も2600店を超えた。現在も、月間10店舗を超える勢いで新店舗をオープンさせている。
それにしても、なぜこれほどまでに100均がもてはやされるのだろうか。その背景には、テレビをはじめとするマスメディアで、部屋の整理整頓などのお助けアイテムとして100均の商品が紹介される機会が増えていることが大きい。
2010年に出版され100万部を超えるベストセラーとなった「人生がときめく片づけの魔法」(サンマーク出版)の著者であり、片づけコンサルタントの近藤麻理恵氏や、本業は漫才師でありながら、趣味の「片づけ・収納」で注目を浴びたことをきっかけに「収納王子コジマジック」として成功している小島弘章氏など、収納の達人といわれるような人たちが、こぞって100均のアイテムを用いて見事に部屋の整理整頓を行なう様子は、主婦層や一人暮らしの学生・独身者を中心に人気を集めており、少なからず売り上げにも貢献しているとみられている。インターネットとスマートフォンの普及で、テレビ離れ、書籍離れが進んだと言われているものの、やはりまだまだ、テレビや書籍の影響力は大きいと言わざるを得ない。
また一方では、100円均一に留まらず、少し高価な300円均一ショップが登場したり、北欧の100円ショップ「タイガー」(10クローネ、約150円)が、大阪のアメリカ村にアジア圏初進出を果たしたりと、多様化、国際化の変容をみせている。これらの新しい均一ショップでは、ただ単に「安い」というだけではなく、デザイン性の高いアイテムや、利便性の高いアイデア商品が女性を中心に注目を集めているようだ。
とくに「300円ショップ」は、明確に女性をターゲットにしており、デザイン重視の生活用品、雑貨やアクセサリー中心の品揃えを展開している。ワンコイン(500円)よりも安く、しかも100円よりもワンランク上であるという絶妙な値段設定が消費者のプライドを保ちながら実益を満たし、人気を得ているようである。さらに100均の商品より質もデザインもよく、その上、ターゲットが絞り込まれているから、雑多な商品の中にも統一感がある。店舗を見て回っているだけで、お洒落な生活スタイルを提案されているような雰囲気をかもし出しているのだ。その辺りが女性にウケているところではないだろうか。
長引く不況の中で「安さ」に慣れてしまった日本人には、ただ「安い」というだけでは心に響かなくなっているのかもしれない。(編集担当:藤原伊織)