がんサバイバーの就労後押しになるか。厚労省がガイドライン 

2016年02月28日 15:16

 一昔前は、がんになったら人生は終わりだった。しかし、今は違う。生存率が向上し、治療後の生活が待っている。厚生労働省は23日、がん患者らが治療と仕事を両立できるよう支援する企業向けのガイドラインを発表した。患者の病気による退職を防ぎ、仕事と治療を両立させてもらうのが狙い。

 ガイドラインでは、企業側に対して働き手である患者の情報を医療機関と共有し、勤務時間の配慮など適切な措置を取るよう求めている。がん対策基本法に基づく就労支援策の一環で、こうした指針は初めて。がんだけではなく、脳卒中なども対象となる。事業者は主治医や産業医等の意見とともに働く立場の人々の意見も聞いた上で、就業の可否、作業の転換、治療に対する配慮などを実施するよう求めている。

 がんを経験し、社会に復帰した人々を「がんサバイバー」という。2012年に国が定めた第2期がん対策推進基本計画に、全体目標の1つとして「がんになっても安心して暮らせる社会の構築」が明記され、さらに個別目標にも「がん患者の就労を含めた社会的問題」が盛り込まれた。これを機にがんサバイバーの就労についての啓発が広がった。

 国立がん研究センターでは、「がんサバイバーシップ支援部」を設置し、企業向けや患者向けのサポートを進めている。病院では退院後のことまでは手が回らないことが多いのでハローワークや社会保険労務士との連係を深めることが大切となるという。

 受け入れる企業側として大切なのは、私傷病という点ではがんも脳卒中も他の病気と変わらないので、「がん」という言葉に振り回されて、「がんだから戦力外」とは思わないで、うまく対応していくことが大切だ。サバイバーのパフォーマンスは復帰直後には下がっているが、時間軸を持って考えることが求められる。

 サバイバー側の意識も大切だ。「これしかできない」というのではなく、「これならできる」「半年後はこれができる」という積極的な姿勢が企業側にも伝わっていく。

 病気をしたために、「働きたいけど働けない」というサバイバーが多いのが現状だ。企業として、能力に応じてどのように貢献してもらうかを考えるのは人事部署の企画力とマネジメントにかかっているのではないか。(編集担当:城西泰)