へその緒幹細胞で新薬開発へ 20年頃の製品化目指す

2016年02月14日 12:02

画・へその緒幹細胞で新薬開発へ 20年頃の製品化目指す

世界中で研究が進められているさい帯だが、国内では東京大学医科学研究所の研究グループが、さい帯に多く含まれる幹細胞を利用した治療薬の開発に乗り出した。急性の移植片対宿主病(GVHD)の患者を対象とする。

 へその緒(さい帯)は古くから誕生記念として残されてきたが、近年ではさい帯と胎盤に残っている血液の中に造血幹細胞を始め様々な細胞が含まれていることがわかり、治療や移植に使われている。

 出産後に後産といわれる胎盤とさい帯に残っている血液を採取して提供する「さい帯血バンク」が広く知られるようになった。急性白血病、骨髄異形成症候群、再生不良性貧血、悪性リンパ腫など約50種類もの病気で造血幹細胞の移植が役立てられている。

 世界中で研究が進められているさい帯だが、国内では東京大学医科学研究所の研究グループが、さい帯に多く含まれる幹細胞を利用した治療薬の開発に乗り出した。血液がんで骨髄移植などを行った後に、肝臓障害や下痢などが起こる急性の移植片対宿主病(GVHD)の患者を対象とする。

 細胞のもとになる幹細胞は、炎症の抑制や組織の修復といった働きもある。20年頃の製品化を目指して、2016年度にも国の承認を得て臨床試験をスタートし、安全性と有効性を確認したいとしている。さい帯の幹細胞を使った薬の開発は国内初。

 妊婦の同意の上で出産時にさい帯を提供してもらい、同研究所内のバンクに凍結保存する。そしてさい帯の幹細胞を培養し、点滴用の薬として加工するという。

 GVHDは命にかかわる合併症だ。移植されたドナーの造血幹細胞がうまく患者に生着すると、患者の体内をドナーの白血球が回るようになるが、ドナーの白血球にとっては患者の体は「他人」であり、免疫反応を起こして患者さんの体を攻撃してしまう。この現象による病気がGVHDであり、重症になると多くの内臓に障害が生じる。HLA(ヒト白血球抗原)の型が合っていない場合や、血縁者以外からの移植の場合にGVHDの頻度が高くなるとされている。

 昨年、倉敷中央病院では、脳性まひの原因となる新生児低酸素性虚血性脳症の赤ちゃんに自らのさい帯血から採取した幹細胞を投与する治療が行われ、改めてさい帯血の可能性に驚かされたものだ。さい帯には血液を作る造血幹細胞の他にも、神経、血管、心筋になる「たね」もあることがわかっている。(編集担当:久保田雄城)