「写ルンです」が人気再燃。いま注目のノスタルジックマーケティングとは

2016年07月10日 15:02

今、10・20代の若者を中心に、富士フイルムの「写ルンです」の人気が復活しているという。この商品に、昭和生まれの人ならば懐かしいと感嘆の声が上がるかもしれないが、平成生まれの人はピンとこないかもしれない。「写ルンです」とは、レンズ付きフィルム・使い捨てカメラなど呼ばれた簡易的なカメラだ(余談だが、写ルンですは「使い捨て」ではなくリサイクルされるエコな製品である)。写真を撮り終えてDTP店に持っていくと本体は回収されて、写真だけが残るという商品だ。写ルンですが初お目見えしたのは1986年7月1日、ちょうどいまから30年前だ。『いつでも、どこでも、だれにでも簡単にきれいな写真が撮れる』をコンセプトに、アミューズメント施設やコンビニなどで売られ、爆発的なヒット商品となった。

 現在のカメラ市場はデジタルカメラでさえスマホにシェアを取られているのが現状だ。2015年のデジカメの出荷台数は2008年のピーク時の1/5となっている。そんな市場背景の中に、懐かしいアナログカメラが売れているのだ。

 人気の理由を探ってみると、3つの要因が分かった。一つ目は、プロカメラマンが「やわらかな空気感はデジタルカメラには出せない」との理由で写ルンですを愛用。写真をフェイスブックやツイッター、インスタタグラムなどに掲載している。その写真を見た若者たちの共感を呼んでいるようだ。

 二つ目は、今年4月に初代とそっくりの30周年記念モデルの「写ルンです」を発売。シニアはもちろん、若者の間でも人気が急上昇、梅田ロフトでは発売日当日3時間で完売。懐かしいが新しい。ファッション業界でよく聞くトレンドは1周して戻ってくるという感覚に近いかもしれない。

 三つ目は、「ノスタルジックマーケティング」だ。文字通り、懐かしさを誘う商品・施設をクローズアップする戦略だ。写ルンですのほかには「アナログレコード」の売上げが伸びている。こちらもアナログならではの温かみのある音質が良いと評判だ。シニアの間では昭和への郷愁、若者の間では昭和への新鮮な驚きが共感・共鳴されている。特にシニアの場合、郷愁と同時に古き良き過去のポジティブな記憶が思い出されるという。

 昭和を彩るフレーズとしては、「1億総中流」「より豊かで明るい未来へ」「世界に冠たる技術革新」などなど、平成の世には考えられない明日を信じることができる言葉ばかりが思い出される。今後、ヒット商品を狙うならノスタルジックマーケティングがキーワードになるかもしれない。(編集担当:久保友宏)