矢野経済研究所では、国内デジタル地図 DB(電子地図)市場に関する調査を実施した。調査期間は2015年5月~11月、調査対象はデジタル地図 DB ベンダー、 GIS エンジンベンダー、GIS アプリケーションベンダー、スマートフォン/携帯電話向け位置情報/地図情報活用サービスベンダー等。調査方法は同社専門研究員による直接面談、電話・e-mail によるヒアリング、ならびに文献調査を併用した。
2014年度の国内デジタル地図 DB(電子地図)市場規模はベンダー出荷金額ベースで、前年度比95.4%の490億円であった。国内デジタル地図 DB(電子地図)市場全体はカーナビ/PND分野の成長に伴い、順調に市場を拡大してきたが、世界的な不況の影響で2009年度は微減、その後2010年度以降は盛り返して微増傾向にあったが、2013年度以降は再び減少傾向にある。2015年度は前年度比 96.5%の473億円の見込み、2016年度は同97.4%の460億5,000万円と縮小基調を予測している。現行のデジタル地図 DB(電子地図)自体は厳しい状況にあるものとみている。
一方で GIS(Geographic Information System; 地理情報システム)を利用した領域において位置情報や地図情報を応用した需要分野が創出されている。今後はあらゆる情報に位置情報が紐付くこととなり、主に防災、マーケティング、ビッグデータ解析といった分野に今後の成長が期待できるものと考えるとしている。
情報通信環境の整備により、大容量のデータや高速通信が可能となり、デジタル地図や地図上に表示される位置情報付きコンテンツが、モバイル端末などで円滑に閲覧、検索できるようになった。さらに、様々な端末やセンサから人やモノの位置情報を取得し、ビッグデータとして活用することが可能になりつつある。
また 2018年から準天頂衛星システムが4機体制になり、位置の測位がより高精度化し、今後は都市部や山間部のさらなる精度の向上が図られることから、官民における様々なサービスへの活用が期待されている。こうしたなか、位置情報や地図情報を応用した需要分野が創出されている。なかでもGIS(GeographicInformation System; 地理情報システム)を利用した領域については社会的な要請もあり、注目されているという。こうした位置情報や地図情報などを融合することで防災、マーケティング分野や、ビッグデータ解析への活用が期待される。今後はあらゆる情報に位置情報が紐付くこととなり、こうした融合された情報を用いたソリューションビジネスが進展するものと考える。
従前より防災分野における位置情報は地図情報とともに用いられ、災害時においては紙媒体の地図を利用して災害場所や避難地域を想定するなど、高頻度で利用されてきた。昨今で被災地域の空中写真や衛星写真などがwebサイトで公開されるなど、官民個人を問わず地理空間情報が生成され、流通し、その有効性が改めて認識されている。今後はGISの位置情報や地図情報を活用した防災マップや避難時における避難場所への誘導など、リアルタイムでの効率的な情報活用や運用が期待されるとしている。(編集担当:慶尾六郎)