市場拡大を見込まれた太陽光発電だったが、「太陽光関連事業者」の倒産が急増している。東京商工リサーチによると、2016年(1-12月)の太陽光関連事業者の倒産は65件(前年比20.4%増)で、調査を開始した2000年以降で最多を記録した。また、負債も大型倒産の発生で過去最高を更新した。
時系列では、上半期(1-6月)だけで30件(前年同期比20.0%増)発生し、2014年までの年間件数を上回った。下半期(7-12月)は上半期をさらに上回る35件(同20.6%増)が発生、時間の経過とともに増加をたどっている。12月は単月最多の10件が発生し、太陽光関連事業者の経営環境の激変ぶりを象徴している。
相次ぐ買い取り価格の引き下げや、2016年5月に成立した改正再生可能エネルギー特措法で事業用太陽光発電は2017年4月以降に入札導入の方針が示され、太陽光関連事業者は企業としての力量を問われている。有望市場への期待を背景に参入企業が相次ぎ、「太陽光関連」市場は活況をみせていたが、ここにきて資金面や準備不足など安易に参入した企業の淘汰が進んでいる。2017年はこれら企業の淘汰が本格化する可能性も出てきた。
負債額別では、 1千万円以上5千万円未満が最多で23件(構成比35.3%)だった。次いで、1億円以上5億円未満の22件(同33.8%)、5千万円以上1億円未満が13件(同20.0%)と続く。
前年比較では、10億円以上が25.0%減少だったのに対して、1千万円以上5千万円未満は53.3%増(15→23件)と大幅に増え、太陽光関連事業者は小規模企業ほど経営悪化が顕著なことを示している。
原因別では、「販売不振」が最も多く35件(構成比53.8%)と半数を占めた。次いで、「事業上の失敗」が11件(同16.9%)、「運転資金の欠乏」が8件(同12.3%)と続く。
前年比では、「事業上の失敗」の83.3%増(6→11件)、「運転資金の欠乏」の60.0%増(5→8件)が突出している。「事業上の失敗」は、太陽光関連市場を数少ない成長分野として参入し事業拡大を見込んだものの、実現性を欠いた安易な事業計画による業績の見込み違いから倒産するケースや、想定よりも市場が拡大せず思い描いた受注を獲得できず行き詰まったケースが目立つ。
「運転資金の欠乏」では、売上高の急激な拡大ののち一気に受注減少に陥り、資金繰りに窮するケースや、つなぎ資金の欠乏や在庫負担で収支バランスが崩れて資金繰りが破綻した事例が多い。太陽光ブームに乗っただけの急成長企業に共通する財務基盤の脆弱さを克服できない企業の倒産は、今後も続発する可能性があるとしている。
2016年の太陽光関連事業者の倒産推移を月次でみると、10月が9件、12月は過去最多の10件発生し、年後半の倒産が目立った。また、倒産に至らなくても信用不安が拡散している企業も少なくない。追い打ちをかけるように、固定買い取り価格の引き下げも待ったなしの状況だ。2017年は採算確保が厳しい太陽光関連事業者の淘汰が、2016年以上のペースで進むことが危惧されるとしている。(編集担当:慶尾六郎)