16年12月の「円安」関連倒産は3件 4カ月連続で前年同月を下回る

2017年01月06日 08:32

2016年12月のドル円相場は、米国大統領選挙でトランプ氏が勝利した以降は、次期政権での財政支出拡大の期待から、16日の東京外国為替市場では一時1ドル=118円台まで円安が進んだ。

 118円台になったのは2月初旬以来、約10カ月ぶり。さらに、12月に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)で1年ぶりの利上げと2017年の政策金利の引き上げ見通しが3回となったことを受けて、ドル買い・円売りの動きが継続された。

 東京商工リサーチによると、2016年12月の「円安」関連倒産は3件(速報値:12月29日現在、前年同月8件)で、4カ月連続で前年同月を下回った。一方、「円高」関連倒産は1件(前年同月ゼロ)だった。過去の円高時のデリバティブ取引の損失などを主な原因とするケースで、3カ月連続の発生になった。12月のドル円相場は1ドル=117円前後の円安で推移した。為替変動の大きな振れはコストアップ要因になり、中小企業の経営に与える影響が大きいため、今後の為替相場の動きからは目が離せないとしている。

 12月の倒産事例としては、墓石・石材販売ほかの法輪(TSR企業コード:400793113、法人番号:7180001040541、愛知県)がある。同社は東海三県を中心に一部関東地区にも進出し、墓石の輸入を行うため、中国に現地関連会社も設け、ピーク時の平成10年2月期には約12億9,100万円の売上高を計上していた。

 しかし、最近は墓石に対する需要減やコスト抑制の意識が強まり、平成21年2月期以降は減収基調に歯止めがかからなかった。その後、役員を含む大幅なリストラ策を実施したが、これに伴う退職金などの計上から大幅な赤字を出した。平成28年2月期の売上高は約1億9,300万円にとどまり、円安を背景に輸入に伴うコスト増大もあって赤字が連続していた。寺院に対する保証金や永代使用権の先行取得費用なども膨らみ資金がショートした。負債総額は約6億8,000万円だった。

 また、カジュアルウエア企画販売ほかのツヅキ・ファクトリー(TSR企業コード:295577436、法人番号:5011701005158、東京都)は、婦人服なども扱い、平成20年頃に中国に関連会社を設立し、製造を委託した。しかし、関連会社への過大な資金投資により資金繰りに余裕を欠き、22年頃より金融機関に対して借入金の返済猶予を行うようになった。さらに、円安が加わったことで採算性が悪化し、資金繰りも限界に達して破産を申請した。負債総額は約2億4,000万円だった。(編集担当:慶尾六郎)