内閣改造に伴い、内閣人事局長に官僚出身の杉田和博内閣官房副長官が就任した。3人いる内閣官房副長官(衆参の議員が各1人と官僚から1人選ばれている)の中から内閣人事局長が選ばれるが、さきの改造まで政治家の内閣官房副長官が就任してきた。自民党内から杉田氏の就任に「改善への一歩」(石破茂元国務大臣)との声もある。
内閣人事局制度は縦割り人事の弊害をなくし、政府の意向を反映しやすいものにと2014年に安倍内閣の下ではじまった。その観点から政治家の官房副長官が内閣人事局長に就いてきたと思われるが、各省の幹部約600人の人事を握る内閣人事局長に加計学園獣医学部新設問題で「総理の御意向」などの文書に名前のあがった萩生田光一内閣官房副長官(当時)が就いていたことから、政治家が幹部職員の人事権を掌握する弊害が指摘されていた。
石破茂元国務大臣は4日のブログで「福田康夫元総理が、共同通信インタビューで内閣人事局の運用について『各省庁の中堅以上の幹部は皆、官邸の顔色を見て仕事をしている。恥ずかしく、国家の破滅に近づいている』『政治家が人事をやってはいけない』『自民党が潰れるときは役所も一緒に潰れる』と厳しく批判しておられる。冷静沈着・公平公正な福田元総理がここまで言われるのはよほどのことだと思う」と問題提起していることを取り上げた。
そのうえで、この構想があがった当時、石破氏は「幹部職員は大臣より官邸の方を見て仕事をするようになり、大臣の権限が行き届かなくなるおそれがある。対象となるすべての人を人事局が多方面から公正に評価することも困難で、人事局に気に入られたいばかりに甘言を弄する者も出てくる結果となるのではないかと難色を示した記憶がある」と書き込んだ。まさに、各省幹部職員が官邸の方みて、官邸の意向を「忖度」する土壌が生まれてしまっている。公務員は国民の方をみなければならない。その意味でも、弊害をなくすための制度検証が必要だ。
石破氏は、今回「内閣人事局長は政治家ではなく、事務の官房副長官が務めることとなり、改善に向けた第一歩であると思う」とした。
一方で「己の利益を超えて国家のために正論を唱えた者が不当に処遇されることのないよう、既に退官した者も活躍できるような方策はないのか、さらに改善できるといいと思う」と、制度改善を行う必要性を強調している。(編集担当:森高龍二)