電通パブリックリレーションズと東京大学大学院情報学環橋元研究室、関西大学社会学部小笠原研究室は、10月22日に投開票が行われた衆議院選挙において、有権者のメディア接触等に関する共同調査を実施した。
毎日新聞によると、第48回衆院選の投票率は53・70%(小選挙区)で、戦後2番目に低い水準となった。序盤から与党優位が伝え事や悪天候との影響などが考えられている。選挙権年齢が18歳以上に引き下げられてから初の衆院選となったが、若年層の政治に対する意識の実態はどうなっているのか。本調査では、若年層を中心に選挙時の情報源や政治関心について調査を行った。
まず選挙に関する情報源は、テレビが依然として重要という結果となった。選挙に関する情報源として、テレビ・新聞は若い年代で接触率が低い結果となる一方、選挙時に接触した情報源を比較した割合を見ると、10・20代テレビへの接触は82.9%、絶対的な割合としてはテレビへの接触が最も高くなっている。一方で、「友人・知人のソーシャルメディア」や、「政党・候補者が発信したインターネット上の選挙情報」では、10・20代を中心とした若い年齢層による接触率が他年代と比較して高い結果となるなど、ネットメディアを能動的に活用するケースも増えてきているようだ。
有権者の意識に関しては、「政治に関心がある」と答えた人が30代(46.1%)で最も低く、10・20代(48.4%)となり若年層の政治関心は高いとは言えない結果となっている。また、政治的有効性感覚に関する設問では、「我々が少々騒いだところで政治はよくなるものではない」で30代(67.8%)、10・20代(65.2%)の回答率が高く、「政治がかわったところで日本の方向性が変わるわけではない」でも30代(40.3%)、10・20代(34.2%)が高い結果となるなど、政治に対する諦めに近い回答も目立った。一方、「経済格差が広がっていると感じる」との回答は10・20代が最低(58.4%)で、「現在の生活に満足している」と答えた人は10・20代(35.5%)が最高となり、若者の現状肯定感の強さが示されてもいる。
近年では、オンラインマスメディアやソーシャルメディアの台頭により情報の取捨選択が可能となっており、言い方は悪いが自分にとって都合の良い情報だけを取り入れる傾向が強くなってきている。若年層は情報の扱いには長けており、ネット上では熱い議論が交わされることも多々あるようだが、そこで満足してしまう、あるいは論破されて自身を喪失してしまう、などなかなか現実に反映されてこないことは社会の損失といえるだろう。社会も個人と同じで小さな成功体験の積み重ねが大きな力を生むこともある。未来に希望さえあれば苦境に耐え抜く気概を若年層は持っているように思う。現在を重視する政治体制が諦めに繋がっている節がある。自らの意見が、僅かでも社会を変えていくという実感を国民が持てる時代はくるだろうか。 (編集担当:久保田雄城)