ITの進歩とともに事務の機械化は大きく進んだ。事務の機械化の中でもITの導入によって最も進化した分野はマーケティング広告であろう。ITマーケティングの普及は事務分野の業務をより戦略的業務にしたといえる。戦略構築のプロセスでは現実からのフィードバックが欠かせない。標的顧客と見込んだ消費者への働きかけが期待したレスポンスを生み出しているか、常にその効果を測定し続ける必要がある。
しかし、多様化したメディアの中で広告の効果測定は複雑化している。こうした環境の中で消費者行動を特定する方法として最も普及している手法がCookieを用いたWeb広告だ。完全ではないにしろCookieという機能を用いれば自社の会員以外の消費者でもネット上の個人を同定し、その消費者行動を追跡することが可能だ。実際にこの手法はどの程度効果測定に有効なのであろうか。
IT・マーケティングコンサルタントのサイカがWeb広告に出稿している企業の広告担当者107名を対象に「Cookie等を用いたユーザー行動分析」に関する意識調査を実施し、その集計結果を公表している。
調査結果によれば、Cookieを用いた効果分析の実施率については「常に実施している」が32.7%、「実施することが多い」41.6%で両者を合わせると7割超の企業でこの手法での効果測定が行われている。「たまに実施」の12.9%を含めると9割弱となり、Web広告を出稿している企業のほとんどがCookie行動分析で効果測定を行っているようだ。
この効果測定での満足度を聞いたところ、「十分に測定できている」は31.8%と3分の1以下で、多くの企業がこの手法での測定に満足していないようだ。この手法に不足を感じる点について聞いた結果、6割近い58.3%が「同時に出稿している他の広告施策による効果との切り分けができない」と答えており、そのほか「効果測定結果の精度や信頼性が低い」が40.0%、「効果を測定できる範囲が限定的で一部効果を測定できない施策がある」35.0%という順になっている。多様化し複雑化する広告環境の中で自分たちのアクションと消費者からのレスポンスとの間に一義対応の関係を見いだせない状況のようだ。
こうした複雑なデータの中から法則性を見いだすのはAI分析ツールの得意分野だ。現況では効果分析は十分満足の行くものではないようだが、AIが進化してもデータの蓄積がなければこれを活用できない。その点で日本企業もデータの蓄積と現況の問題把握を行っており、AI時代での戦略構築の準備はできているとも言える。(編集担当:久保田雄城)