ガートナー社が12月20日に発表した見通しによると、2011年の世界半導体市場の売上げは、過去最高を記録した前年と比べて0.9%増の3,020億ドルになるという。さらにWSTS(世界半導体市場統計)が発表した2011年秋季市場予測においては、2012年は7.6%増、2013年は5.4%増とプラス成長が継続するとの見通しを発表している。
そのような中で2011年の日本市場は初頭から、東芝がモバイル機器等における消費電力削減につながる新しいフリップフロップ回路の開発を発表、またルネサス エレクトロニクスも大容量フラッシュメモリを内蔵する低消費電力マイコンを製品化するなど、各社が小型化・薄型化・低消費電力化などに尽力していた。そこに東日本大震災が発生。操業停止した半導体工場は約30弱で、すでにそのほとんどが生産を再開しているが、代替生産などの手段で供給を賄っている面もあり、完全復旧とはいえない状況にあるといえる。
この震災を機に、従来から高まっていた地球環境への意識や省エネルギー機器への関心が、節電意識と共に急激に加速した。そして太陽光発電への関心とともに、半導体業界にとって大きな希望となっているのがLED照明である。世界中を灯している既存の照明の数を想像しただけでも、その市場の持つポテンシャルの大きさが伺い知れる。現在、コンビニ業界や大型SCなどの店舗を中心にLED化が進み、東京スカイツリーや通天閣のライトアップなどにも多くのLEDを使用されている。この状況を受けてロームグループのAGLED(アグレッド)は、ロームの半導体技術を活かし、業界トップクラスの薄さ39mmを実現した業界最薄かつ業界最高の省エネ性能を誇るシーリングライトのラインアップを拡充、全12機種をラインアップした。東芝はルーブル美術館の照明をLED照明に置き換えることでブランドイメージの向上を図るなど、諸策様々である。照明のLED化は今後も続くことが確実視される。しかし一方で、その寿命の長さも特徴なため、買い替え需要までの期間が長いLED照明は、今を逃すと商機を逃すことに直結するといえるだろう。普及とともに価格下落がとまらない中で、シェア争いの激化は必至である。各企業がどのような策を講じていくのか、非常に楽しみな分野である。
また、世界の半導体市場が、欧州の財政危機や世界各国で失業率が高水準に留まっているなど、世界的に経済市況が悪化の一途を辿る中で、過去最高水準を更新出来た要因にスマートフォンの本格普及と新型タブレットPCの市場拡大が挙げられる。この分野においては、バッテリーの大型化やパネルの狭額縁化などに伴って、部品の小型化や薄型化、低消費電力化の傾向が進んでいる。この傾向を受けて村田製作所が世界最薄型圧電スピーカの高音質化・防水化モデルの量産を開始するなど、着実に日本のメーカーがその技術力を世界に発信している。前述のガートナー社の調査によれば、 2010年の携帯電話全体の出荷台数は16億台、2011年は18億台にまで拡大し、スマートフォンはその24%を占める見通しである。さらに2014年には携帯電話は22億台にまで拡大し、同比率は40%まで向上、タブレット端末の普及も加速するなど、大容量メモリーの搭載、低消費電力化への需要拡大が見込まれている。この分野でイニシアティブを取っていけるのか、それが2012年の課題と言えるであろう。
さらに日本の主力産業である自動車も、カーエレクトロニクス化やEVの拡大が進んでいる。そこに利用される車載マイコンなどは、その需要拡大が大きいと見込まれる分野である。現在は43%と圧倒的シェアを誇るルネサス エレクトロニクスを筆頭に日本企業が健闘しているが、先の震災で大きな被災を受けたため、供給量は回復したものの行き先が不透明とも言われている。トンビに油揚げを攫われないよう、この分野での基盤をいかに早急に固め、他の追随を許さぬ進歩を見せられるかが問われることになりそうだ。
新興国の急激な経済発展に伴う世界的な電力消費量の増加は、先進国でのエネルギー供給の見通しの変化と相俟って、エネルギー資源の効率使用への動きや再生可能エネルギーの利用を加速させている。この動きは世界規模で進行する動きであり、半導体への需要は、今後ますます増加することはほぼ確実と見られている。