官民が一体となった組織は多く存在するが、その取組みに最も関連する企業や団体と行政という組み合わせが一番多く見られる。だが、「埼玉県住まいづくり協議会」は行政と関連企業以外にも銀行やマスコミ、多くの公共団体などもメンバーとして存在する珍しい形態の協議会だ。
この協議会の設立は平成8年。行政と民間が住まいに関する情報を共有しながら連携を図り、埼玉県の住生活の向上を実現するため、当時は「彩の国豊かな住まいづくり推進協議会」という名称でスタートした。
協議会が注目を浴びるようになったのは、組織名を現在の「埼玉県住まいづくり協議会」と変更した平成17年。当時、社会問題となっていた横行する悪徳リフォーム業者への対策として、『リフォーム事業者登録制度』を導入し、締め出しを実施したことだった。協議会のホームページに加盟社だけでなく、非加盟社の情報も徹底的に公開をすることで、消費者にも選別してもらい、リフォーム事業の失いかけていた社会的な信頼を取り戻すことに成果を上げている。また、その翌年には住宅行政の推進に寄与したとして、国土交通大臣表彰を受章し、全国的にも知られる存在となった。
そして今では、行政の政策にも強力なアドバイザー的存在として、様々な案件への協力体制を敷く。例えば、現在、県が進める「埼玉県住生活基本計画」の見直しのために行われた「平成23年度住宅施策研究会」の場で、県民がいきいきと生活できる「住環境のありかた」、高齢化で増え続ける「既存ストックの把握と再生」、住生活基本計画を具現化するための「協議会の役割・体制」などについて積極的に意見交換をすることで、スムーズな政策実施のための全面協力を行っている。協議会の会長を務めるアキュラホームの宮沢社長は「住環境を良くしていくために、民間企業と行政が密接に関わりあって活動しているのは、全国でも稀なこと。『埼玉県住まいづくり協議会』は住まいのつくり手として、埼玉県住生活基本計画の策定に深くかかわっており、埼玉県民の住生活向上の実現をこれまで以上にサポートしていく」と決意を語っている。
同協議会はこの見直し案の基本方針である、住む人(県民)、つくる人(ハウスメーカー・工務店)、流通させる人(不動産関連企業・市民団体・NPO法人等)、行政などの多くの主体(=みんな)で作り上げる”子育て力”"環境力”"地域力”3つの力の向上により、ムーブメントを起こすことこそ、目指している活動そのものであるとしており、だからこそ関係者の期待は大きい。そして、この政策の具現化は、他地域が参考にするモデルケースの役割も担っているだけに、その動向は常に注目しておきたい。