今年に入り実質賃金は連続でマイナス推移だ。全般的人手不足感の中、企業は離職抑止のため賃上げに努力しているが、昨年後半からの景気減速と人件費高騰に挟まれて賃上げ圧力も息切れのようだ。幸か不幸か物価上昇はターゲットには至らぬも順調で、結果として実質賃金は連続マイナスとなった。賃金マイナスと言っても、これはマクロ平均値であり業種によってまだら模様だ。政府統計では詳細な構造は見えにくいが、こうしたミクロな視点は業界、企業調査が便利だ。
5月~6月にかけて人材サービスのエン・ジャパンが自社のサイトを利用する正社員6289名を対象に「月給」をテーマにネット調査を実施、この結果を9日にレポートとして公表している。
「月給(基本給)は上がったか」という質問に対して「上がった」との回答は37%であった。これは昨年の調査と比べ9ポイントも減少し、全体として賃金上昇にブレーキがかかり始めたことをうかがわせる。「上がった」理由については「定期昇給」が58%で6割は賃上げとは関係が無い。安倍政権が6年連続で要請している「ベースアップ」によるものはわずか20%で、しかも前年の調査に比べて3ポイント減少した。
増加した額の構成を見ると「~1000円」が13%、「1001~3000円」が29%、「3001~5000円」が20%、「5001~10000円」が17%、「10000円以上」が21%となっている。「10000万円以上」が21%いるものの「1001~5000円」で49%と半数で、0円も含む5000円以下は62%となっている。
業種別に見るとベースアップの実施率が高い業種は「メーカー(機械・電気・電子など)」の12%、「インフラ(電力・ガス・水道など)」の12%、「メーカー(素材・食品・医薬品など)」10%が上位3位でメーカー系が高くなっている。従業員規模別に見ると「501~1000名」が10%と最多で、次いで「1001名以上」の9%、「301~500名」8%、「101~300名」7%、「100名以下」5%とやはり規模が大きい方が実施率は高い。
「転職を考える際、月給は重視するか」との問いには「最も重視する」「重視する」の合計は92%。で年代が上がるに従い月給を重視する者の割合が高くなっている。「重視しない」者の中では「人間関係」「やりがい・達成感」が上位を占めている。
月給を重視する理由のトップは「生活に余裕がない」となっており、やはり社会全体として生活(資金に)にゆとりがない時代のようである。(編集担当:久保田雄城)