新型コロナウイルス対策は言うまでもなく衛生行政としての感染症対策である。しかし、同時に医療経済の問題で有り、地域における医療の需給バランスを維持する政策でもある。外出禁止や営業禁止などの強い規制を行えば感染者を減らす強い効果を持つことは間違いない。
しかし、経済は人と人の連携であり、衛生行政上の規制が強いほど地域経済は著しく停滞する。感染症対策と経済のバランスを如何に取るかが課題だが、極めて判断の難しい課題だ。2月の政府基本方針以来、日本の経済は全般的に急激な縮小過程にある。これはマクロ統計を見れば歴然だ。
しかし、細かに見ると業績悪化が全般化する中で、むしろコロナ対策で業績を伸ばしている分野も存在する。コロナ騒動が終息したあとも社会は元の状態には戻らないであろうことは少なくない論者によって指摘されている。ポストコロナの経済社会がどのようなものになるか、それを見据えてビジネスチャンスに繋げていこうとする動きももう始まっている。
3月25日に帝国データバンクが「新型肺炎が日本経済に及ぼす影響(4)」を公表している。レポート内で参照されている「TDB 景気動向調査」によると2020年3月では売上高が減少している企業は55.8%と半数を超えた。減少幅が著しいのは旅館・ホテルや家具類小売、飲食店、娯楽サービスなどだ。
その一方で売上高が増加傾向の企業が21.4%存在する。増加している業種・分野を見ると、電気通信サービスやソフトウェア業界、IT向け人材派遣などとなっている。企業からの声を見ると「テレワーク関連の案件増加が見込める」(ソフト受託開発)や「外出が減ることで宅配の需要が高まる」(飲食料品小売)、「中国から輸入不可となった商品の生産の依頼を受けている」(電子計算機等製造)などとなっており、また「 農産物のリスク軽減化にともなう国内生産強化の動きにより、販売機会の拡大が見込める」(野菜卸売)など 新たな需要開拓を進めている動きを示す声も見られた。
リーマンショックは金融から始まり実体経済に波及していったが、新型コロナの影響は実体経済を直撃し人々の暮らし方を変えようとしている。レポートでは「2008年のLS後に起こった変化を捉えた企業が大きく成長を遂げたように、新型コロナウイルス後に訪れる社会変化を今から想定しておくことも、企業の生き残りに重要な条件となろう」とまとめている。(編集担当:久保田雄城)