アサヒグループホールディングス(HD)の独立研究子会社であるアサヒクオリティーアンドイノベーションズは、CO2排出量削減の新たなモデルとして、ビール工場排水由来のバイオメタンガスを利用した燃料電池による発電の実証事業を、アサヒビール茨城工場にて開始すると発表した。
この実証事業において、三菱日立パワーシステムズ(MHPS)が、固体酸化物形燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell/SOFC)『MEGAMIE(メガミー)』を納入する。また、三井住友ファイナンス&リース(SMFL)は、リーススキームによるファイナンスサービスを提供。
今回の実証事業は、環境省の二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金の「CO2排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業」で実施しており、SMFLは申請代表者として事業全体の取りまとめを行なう。今回の実証における設備が稼働すると、発電出力200kWとして年間発電量約160万kWh(一般世帯約350戸分)の電力を供給することが可能となり、これにより年間1000トン程度のCO2排出量削減が見込まれる。設備の運転開始は2020年10月を予定するという。
アサヒグループではCO2排出量削減を目指し、工場稼働のためのベース電力を確保できるよう、従来からエネルギー変換効率の高い燃料電池による発電設備導入に取り組んできた。燃料電池のカーボンニュートラルな動力源として、ビール工場の排水処理化工程で発生するバイオガスを用いるため、2018年6月までにガスを高純度に精製するプロセスを開発。精製したバイオガスを用いて小規模のSOFCで発電する試験を実施、2019年5月には1万時間の連続発電に成功している。
今回、世界最高クラスの発電効率を誇るMHPSのSOFC『MEGAMIE』をアサヒビール茨城工場に導入し、実用化に向けた最終試験を開始する。2017年より商用販売を開始した『MEGAMIE』は、通常都市ガスを燃料としてCO2発生量の少ないクリーンな電力および熱を供給するが、今回の事業ではビール工場排水由来バイオガスを燃料として利用する初めてのケースとなり、バイオガスの精製設備と組み合わせることで、大幅なCO2排出量の低減が期待できる。事業完了までに、工場排水から得られるバイオガスを動力源とした燃料電池発電技術の確立を目指す。
今回の実証に参加する各社は技術の社会実装のために具体的なスキームを検討する。
アサヒグループでは、食品業界をはじめ技術を活用可能な業界へ幅広く普及させるため、今回の実証事業で得られたバイオガス精製や設備導入に必要な技術に関して、特許を取得することなく、可能な限り情報を公開する予定だ。
また、MHPSでは、今回の実証事業より得られたデータをもとに、ビール工場はもとより、多様な未利用のエネルギー源を活用する発電システムへの展開を図る。加えて、『MEGAMIE』の性能や利便性の向上にも取り組み、脱炭素社会構築にふさわしいエネルギー創出に貢献していく計画だ。
SMFLは、リースをはじめとする各種ファイナンスサービスを提供することで、設備投資にかかる資金提供や初期費用の抑制など、燃料電池の普及を支援する。(編集担当:吉田恒)