注目される福岡市の「感染症対応シティ」。これからのまちづくりとは?

2021年02月14日 08:14

旧大名小学校跡地活用事業 パース(OH棟)

積水ハウスらが事業を担う「(仮称)旧大名小学校跡地活用事業」

 2021年に入ってからも、新型コロナウイルスの流行は拡大を続けており、政府も2度目の緊急事態宣言の期限延長を決定するなど、未だ終息が見えてこない。

 個人の健康被害だけでなく、経済活動にも甚大な被害をもたらしている中、経団連でも「オフィスにおける新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン」を策定し、感染症に対する基本的な考え方と具体的な対策を示し、各事業者に勧めている。とはいえ、事業の置かれた状況や規模、形態は百態だ。多くの企業がテレワークを導入したり、事業を継続しながら、いかに社員への感染リスクを抑えるかに頭を悩ませていることだろう。

 また、自社に合った最善の感染防止策を遂行し、社員を感染のリスクから少しでも遠ざけることは、企業に今求められている喫緊の課題だが、それと同時にアフターコロナ、さらには今回の苦い経験を糧に、未知の感染症をも想定した、社員が安全に、安心して働けるオフィスづくりやまちづくりを考えていく必要があるのではないだろうか。

 そんな中、注目されているのが福岡市の「感染症対応シティ」への取り組みだ。同市は、都心部である天神ビッグバン、博多コネクティッド、ウォーターフロントネクストなどの再開発プロジェクトを進めていたが、新型コロナ感染拡大の状況、および今後、感染症時代に対応した安全安心なまちづくりが重要になってくることから、昨年8月にこれら都心部再開発の特例等の要件を見直し、新たに「感染症対応シティ」を目指す方針を固めた。

 感染対策としては「換気」「非接触」「身体的距離の確保」「通信環境の充実」を掲げる。具体的な誘導策として、上記感染対策を行うビル計画に対しては、最大で50%の容積率を緩和するなどの優遇措置を設ける。

 また、市内に来店型の施設等を有する中小企業者や個人事業主に対しても、感染症対策の強化の取り組みにかかる物品やサービスの導入経費、工事経費の3分の2を上限60万円として支援するなどもしている。

 例えば、「天神ビッグバン」の西ゲートとして、旧大名小学校跡地で、2022年12月の竣工を目指して建設が進められている「(仮称)旧大名小学校跡地活用事業」が、その代表的な例だ。プロジェクトを進めている、積⽔ハウス株式会社、⻄⽇本鉄道株式会社、⻄部⽡斯株式会社、株式会社⻄⽇本新聞社、福岡商事株式会社の5社が設立した「⼤名プロジェクト特定⽬的会社」は2月8日、当プロジェクトにおける「換気」、「非接触」、「身体的距離の確保」、「通信環境の充実」等の感染症対策の内容を発表。オフィス外装カーテンウォールに自然換気スリットを導入したり、オフィス空調機には浄化作用に優れる高性能フィルターを採用するなど、積水ハウスが所有する最新技術による配慮をはじめ、緑化テラスや回廊の設置、さらには商業テナントには屋外テラスを併設して屋外スペースの活用を促進するなど、万全の換気対策を講じている。また、非接触対策としては、オフィスセキュリティゲートと連動したタッチレスエレベータ呼出システムや、オフィスロビーにQRコード等による無人受付システムを採用。また、各オフィスでは、スマートフォンやPCを利用した遠隔空調コントロールによりスイッチの接触を回避するシステムを導入する。

 同施設は、貸床面積約2,500㎡という福岡屈指のフロアプレートを持つことで、身体的距離の確保も容易なうえ、内装にもSIAA(抗菌製品技術協議会)による抗菌抗ウイルス加工製品を積極的に採用するという。

 福岡市では、このような「感染症対応シティ」などの国際競争力を高める取り組みを進めることで、コロナ対応だけでなく、福岡の都市ブランドの向上とアジアのリーダー都市への成長を目指している。

 目の前の感染防止策ももちろん大事だが、コロナ後の未来をも見据えた施策をとることで、都市にとっても、企業にとってもブランド力を高める大きなチャンスにもなるかもしれない。(編集担当:藤原伊織)