住宅建設、長期的に減少。ゼロエネルギー・ハウスの目標達成は困難。背景に人口動態、耐用年数の長期化

2021年06月18日 06:57

画・住宅建設、長期的に減少。ゼロエネルギー・ハウスの目標達成は困難。背景に人口動態、耐用年数の長期化。

野村総研が2040年度までの住宅市場予測。人口構造や平均築年数の伸長等により40年度の着工戸数は46万戸まで減少、30年度のZEHストックは159万戸

 日本の住宅の断熱性は世界の中でも最低レベルで、エネルギー効率が悪く、省エネの観点からも長年の課題となっていた。経済産業省は2015年に関係省庁等と共に「ZEHロードマップ」を策定し、「2020年までにハウスメーカー等が新築する注文戸建住宅の半数以上で、2030年までに新築住宅の平均でZEHの実現を目指す」という政府目標を掲げている。

 ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)とは「断熱性能等を大幅に向上させ、大幅な省エネルギーを実現し、再生可能エネルギーなども導入して、年間の一次エネルギー消費量収支ゼロを目指す住宅」のことだ。ZEHを普及させる為には当然、新築住宅の建設が促進されなければならないが、少子化と言った人口動態や耐用年数の長期化、経済成長の動向などから試算すると目標達成は非現実的なようだ。

 6月8日、野村総合研究所が40年度までの住宅市場の予測の結果を発表している。これによれば、21年度から40年度の新設住宅着工戸数は、移動世帯数の減少、平均築年数の伸長、名目GDPの成長の減速等により、20年度の81万戸から30年度には65万戸、40年度には46万戸まで減少していくと見込まれる。種類別の内訳は、30年度には持家21万戸、分譲住宅18万戸、貸家27万戸といずれも漸減する見込みだ。

 リフォーム市場については、増築・改築にエアコンや家具等のリフォームに関連する耐久消費財、インテリア商品等の購入費も加えた広義のリフォーム市場では、40年まで年間6~7兆円台で微増ないし横ばい傾向が続くと予測されるが、増築・改築工事および設備等の修繕維持費のみの狭義のリフォームではそれより1兆円前後少ない規模と見込まれている。

 こうした見込みを総合すると、20年度から30年度のZEH着工戸数は19年度までの増加傾向を維持して引き続き増加するものの、24年度には頭打ちとなり微増傾向にシフトすると予測されている。着工戸数の累計であるZEHストック数は、30年度に向けて着実に増加する見込みであるものの、予測されるストック数は159万戸にとどまり「社会資本整備審議会第18回建築環境部会提出資料におけるエネルギー削減量の算出根拠について」にて示されている30年度の政策目標達成に必要な目安としてのZEHストック数313万戸には遠く及ばない見込みのようだ。(編集担当:久保田雄城)