新型コロナ感染症の流行は社会のあり方を大きく変えた。それは一過的な感染予防のための変化ではなく、長期的な構造変化を生み出している。コロナ以前より働き方改革が推進され、企業は様々な制度改革を試みてきたが、現実に機能したものは多くはなかった。しかし、感染予防のためのテレワークの実施・普及など、足踏み状態にあった制度の利用・改革がいっせいに動きだし、今ではトレンド化していると言える。コロナ禍で大きく進んだ働き方の改革は何と言っても接触回避のためのオンライン化であろう。DX推進への全産業的な関心の高まりもコロナの流行が背景にあると言っても過言ではない。
帝国データバンクが9月下旬、全国1万2222社を有効サンプルに「働き方改革の取り組みに関する企業の意識調査」を実施、10月21日にその集計結果を公表している。これによれば、「新型コロナ流行を契機に取り組みを開始した」働き方の改革について尋ねた結果、「オンライン会議の導入」と答えた企業の割合は49.4%と半数にのぼる。「コロナ前から取り組んでいた」14.6%、「今後取り組む予定」9.0%を合わせると7割超の企業がオンライン会議へ移行していることになる。
また、「オンライン商談の導入」の34.2%、「在宅勤務の導入」の32.9%がコロナを契機として開始されたとなっている。「コロナ前から」と「今後予定」を加えると、「オンライン商談」が58.4%と6割、「在宅勤務」45.2%と半数近くになる。自由回答を見ると「WEB会議による無駄な時間および経費の削減に有効であった。今後もWEB会議は一部継続する」(一般機械修理)など、取り組みの中で効果を実感し継続利用を決めた企業も多いようだ。
また、「今後取り組む予定」では、「ペーパーレス化の推進」25.4%や「インターネットによる受注・販売の強化」20.4%、「RPAなど業務効率化ツールの導入」20.3%が多くなっており、コロナを契機に4社に1社がペーパーレス化、5社に1社がEC販売の強化やRPA(事務自動化ロボット)の導入といった取り組みを予定している。
コロナ禍で既に、会議や商談のオンライン化が出張の機会を減らし観光業への需要を縮小させている。コロナを契機とした働き方や業務構造の急激な変容が需要構造の大きな変化も生み出している。それは一方で需要減少によるビジネス機会の喪失になるが、他方ではビジネス機会の創出にもつながる。(編集担当:久保田雄城)