日本のICTは世界から数十年遅れていると言われてきた。しかし、新型コロナ感染症の流行を契機にテレワークや会議・商談その他のオンライン化などの推進の動きに伴い、周回遅れと言われてきたDX投資も一斉に動き始めている。こうした背景も後押ししているためか、マーケティング部門でのAI化が急速に進展し、少なくともシステム導入といった点では世界トップクラスに躍り出ているようだ。
米国に本社を置くソフトウエア企業のアドビの日本法人が日本を含めた世界6カ国(米国、英国、フランス、ドイツ、オーストラリア、日本)のマーケティング担当者と消費者を対象に実施した「未来のマーケティングに関するグローバル調査」の結果レポートを11月9日に公表している。これによれば、AI・機械学習の活用について、日本のマーケティング担当の41%が「積極的に活用している」と回答しており調査対象の6カ国の中で最も高くなっているとともに、54%が自社のマーケティング・テクノロジーに「高い信頼を寄せている」と回答している。レポートでは「日本はしばしばデジタル後進国と評されるものの、新しいテクノロジーを活用して顧客体験を改善し、業績につなげようとする前向きな姿勢が明らか」と評している。ちなみに6カ国の「AI・機械学習の積極的活用」の割合は、日本41%、フランス41%、米国40%、英国28%、オーストラリア24%、ドイツ22%だ。
AI・機械学習を活用している領域は、コンテンツのパーソナライゼーションが55%と最多、次いでコンテンツの最適化47%となっており、商品購入までつなげるパーソナライゼーションに注力しているようだが、消費者の49%がパーソナライズされたコンテンツに価値を感じておらず、顧客体験に満足していない。直近1年で「企業のデジタル顧客体験が改善した」とする消費者はわずか15%、これは6カ国中で最も低く、消費者からの信頼といった点からは未だ課題が多いようだ。
マーケティング部門の管理者の94%が「データガバナンスを重視している」と回答しているもののデータガバナンスやプライバシーポリシーについて「十分理解している」との回答は43%のみで6カ国中5位だ。データガバナンス実行力の懸念は6カ国平均86%だが日本では65%にとどまっており、レポートでは「管理者層がデータガバナンスの重要性を理解しつつも、実際には十分な関心を寄せておらず、世界の管理者層と比較しても課題意識が低い」と指摘している。(編集担当:久保田雄城)