世界経済の回復が本格化し始めた。2018年の米中摩擦の影響で中国経済が減速、日本はこの影響を受け中国向けを中心に輸出が大幅に減少、同年後半より景気後退局面に入った。20年に入り新型コロナ感染症の広がりの影響で対個人サービス業を中心に大きな打撃を受けたが、中国経済の早期回復を背景に5月には製造業を中心に底を打ち回復傾向で推移している。これに加え21年にはワクチン接種の広がりへの期待や中国・アジア好調を背景に世界的な設備投資の再開が見られ長期的な景気の拡張が本格化しそうだ。
9月28日、富士経済が工作機械、鍛圧機械、成形機の世界市場を調査した結果を取りまとめた「2021年版 マシンツール&機械要素部品市場の現状と将来展望」を発刊、その内容の一部を公表している。これによれば、20年後半より中国を中心にアジアで需要回復、世界的にデジタル化推進や5G通信関連の投資が増加し、電機・電子、半導体分野が堅調に推移、これに伴い製造機械の需要も増加傾向のようだ。欧米や日本においても自動車分野をはじめ製造業の設備投資が回復傾向で、21年以降の市場は拡大する見込みだ。中でも、工程集約や自動化目的の需要が増加傾向で、複数の加工・成形機能を有するマシニングセンターやターニングセンター、パネルベンダーなどの伸びが期待されている。またEV普及をにらみ主要機械メーカーはモーターやバッテリー、減速機などEV部品向けの加工技術の開発やAI活用による自動化や技術継承への取り組みも活発化しているようだ。
工作機械は、中国・アジアでの電機・電子分野や精密加工向けで需要増加が予想され、ユーザーニーズに適したマシニングセンターやNC放電加工機などが注目されている。鍛圧機械は、欧米、日本で自動車や航空・宇宙分野が復調し、またCFRPやチタン加工ニーズ増加で市場拡大が予想されている。成形機は中国を中心に電機・電子、医療、食品分野などが好調だ。
こうした背景から21年の工作機械の世界市場は20年比116.2%の1兆9097億円の見込み、25年には20年比167.1%の2兆7459億円に達する予測だ。鍛圧機械の21年見込みは同109.2%の6675億円、25年には同141.7%の8660億円の予測、成形機は21年に同110.8%の1兆2934億円の見込み、25年には同149.9%の1兆7508億円と予測されている。世界の製造業はポストコロナに向けた旺盛な設備投資を背景に2桁近い高く長期的な拡張となりそうだ。(編集担当:久保田雄城)