世界のインフレが止まらない。コロナ禍での経済再開に伴う需要急増で昨年からエネルギーや穀物価格が急騰している。これに加え2月のウクライナ侵攻でインフレ期待はさらに高まった。これに伴い外為市場は各国の利上げ期待へ大きく動き出し、3月から急速な円安が続いている。世界的なインフレに伴い米国をはじめ世界各国の中央銀行は利上げでインフレに対抗するであろうと期待される中、多額の財政赤字を抱える日本は金融緩和を続けざるを得ない。急速なインフレは当然、急速な円売りにつながる。
4月半ばより原価高による米経済失速が懸念され円/ドル・レートは一時的に方向性を欠いたものの、5月には米国FRBが利上げペース加速を示唆し、6月には米経済指標が好調だったことを受け、再び円安が加速しだした。日本はコロナやウクライナ情勢に伴うインフレに加え円安による輸入物価高騰という二重のインフレの中にある。今のところ円安の動きが止まる材料はないが、いつまで円安が続くのだろうか。
6月13日に日本総研(日本総合研究所)がレポート「為替相場展望 2022年6月」(ドル円分析:ドル高は徐々にピークアウト)を公表している。これによれば、5月下旬からの円安加速の背景として(1)日銀による金融緩和の維持、指値オペによる長期金利抑制、さらに期待インフレ率上昇による実質金利低下も加わり、日米金利差が拡大していること、(2)貿易赤字が拡大している中、決済に外貨を必要とする実需筋とこれを材料とする投機筋の円売りが増加した可能性、の2点を挙げている。
こうした状況下で、米FRBの利上げペース加速の期待も根強く、夏場までは「円安に振れやすい地合いが続く見通し」としている。しかし、FRBの利上げは市場で相当に織り込まれており「米金利の上昇余地は限られる見込み」で、さらにインフレ率も徐々に低下すると期待され、「秋以降の利上げペースは鈍化する見通し」としている。これに加え、米景気の先行き不透明感も出てきており、急ピッチでの利上げによる金融環境の引き締めなどを理由に「景気の減速が意識されやすい状況」になると予想されることなどから、レポートは、秋以降「ドル高・円安は徐々にピークアウトする見込み」としている。(編集担当:久保田雄城)