東京商工リサーチが上場企業「コストアップによる業績影響」調査。今回の物価高は、資源高だけでなく、円安加速も大きな要因、製造業からサービス業など、あらゆる業種に原価上昇が波及。原材料価格や物流費などの上昇が、上場企業の業績下振れを加速
食品メーカーの値上げ発表が相次いでおり、消費者にもインフレの実感が出てきている。企業の原価動向を示す企業物価指数は昨年春頃から上昇に転じ、4月には前年同月比10.0%と1981年以降最高を記録している。一方、消費者物価指数の4月の前年同月比は2.5%となっており、企業努力によって消費財への転化をできるだけ抑え込もうとしているようだ。当然、企業の利益は圧迫されることになるが、原価急騰から1年以上が経過し、3月以降の急激な円高もあり、営業損益の下方修正など業績への悪影響が目に見えるようになってきている。今後はますます原価や物流費の高騰が消費財価格への転嫁に波及して行きそうだ。
6月7日、東京商工リサーチが「2022年3~5月、上場企業『コストアップによる業績影響』調査」の結果を公表している。これによれば、「ロシアによるウクライナ侵攻、エネルギー価格の高騰に円安進行。稀にみる原材料価格や物流コストなどの上昇が、上場企業の業績下振れを加速」しており、3月1日から5月31日にコストアップが業績を押し下げたと公表した企業は181社となっている。引き下げられた営業損益の額は1794億3300万円に達している。
181社のうち、売上高500億円未満が114社で構成比62.9%と6割を超えており、「経営基盤が強固な大手より、中堅・新興の企業ほど今回のコストアップの影響を強く受けている」、「下請構造やシェア争いのなかで、上場企業でも競争力が弱い中堅や新興企業ほど厳しい状況に陥っている」とレポートは指摘している。
業種別では、製造業が122社と構成比67.4%、約7割を占め最も多く、原材料・資材価格、物流コストの高騰などが多くの製造現場に広がっているようだ。次いでエネルギー価格上昇が直撃している電力会社やガス会社などを含むサービス業の18社、構成比9.9%、輸入比率が高く円安の打撃を受けている卸売業の17社、同9.3%と続いており、幅広い業種に悪影響が広がっているようだ。一方で大手の輸出産業を中心に円安で販売価格が上昇するなど好決算が相次いでいるほか、資源高を追い風に総合商社などでも好業績が続出している。
レポートは「コロナ禍の影響に加え、ロシアのウクライナ侵攻が収束のめどが立たず、コストアップが深刻な経営課題となっている。こうした状況が長期化すれば、企業業績の二極化はさらに拡大する可能性が高まっている」とまとめている。(編集担当:久保田雄城)