いよいよ、日本に外国人観光客が戻ってくる。日本政府は、新型コロナのパンデミック以降、水際対策として停止していた外国人観光客の入国を6月10日から再開することを決定した。3月にはビジネス目的の渡航者や技能実習生や留学生の受け入れが認められたものの、観光客は依然として入国できない状況が続いていた。しかし、世界的に新型コロナウイルスへの感染対策の緩和が進んでいることなどを受け、6月1日には一日当たりの入国者数の上限を1万人から2万人に引き上げ、今回の外国人観光客の受け入れ再開となった。
まずはアメリカや韓国、中国など、陽性率による区分けで最もリスクの低いとされる98の国と地域を対象とし、さらに当面は添乗員付きのツアー客に限定するなど、条件付きの再開ではあるものの、新型コロナで大きな打撃を受けた観光業や地域経済の回復につながることが期待される。
これに対し、今年2月に全日空の社長に就任した井上慎一氏は「再開は朗報。円安も重なり訪日需要は高まっている。地域経済活性化のためスピード感を持ってG7各国並みに水際対策の緩和や撤廃がさらに進むことを切望する」と述べ、これからの展開に期待をのぞかせた。
コロナ禍以前は空前のインバウンドブームに沸いた日本列島。しかし、一度離れてしまった観光客を以前の水準にまで取り戻すのは、入国者数の制限がさらに緩和されたとしても、なかなか容易なことではないだろう。少しずつ戻ってくる外国人観光客の日本に対するイメージを向上し、「日本に行って良かった」「日本にまた行きたい」と思ってもらうにはどうすればいいのだろう。その一つのカギとなりそうなのが、日本のSDGsへの取り組みではないだろうか。
例えば、日本の玄関口である成田国際空港(NAA)では、2019年から、プラスチックゴミ対策に率先して取り組み、2025年度までにNAAグループ直営店舗、ラウンジで空港利用客の手に渡る使い捨てプラスチック製品の100%サステナブル化を目指す「成田空港のプラスチック・スマート」を宣言しており、グループ直営店で使用するショッピングバッグをエコ素材に100%切替えたり、グループ直営飲食店、ラウンジで使用するプラスチック製のストローを紙製に切替えるなどに取り組んでいる。中でも、利用客から高い注目を集めているのが、木のストローだ。紙製のストローはファストフード店などでも見かけるようになったが、木のストローは世界的にも珍しい。これは、木造注文住宅メーカーのアキュラホームグループが、間伐材などを利用し、日本の木造建築に伝わるカンナ削りの技法を応用して、世界で初めて量産に成功したものだ。2019年にはG20大阪サミットの会合でも採用されたことで海外VIPの間でも大きな話題を呼び、今年2月にはフジテレビジョン制作のドラマ「木のストロー」として、開発秘話がドラマ化されるなど、今や企業SDGsの代表的なが取り組みとして注目されている。成田空港でも、直営飲食店で提供されるカフェラテ限定で採用されており、海外からの空港利用客にも好評のようだ。
日本独自のSDGsとしては、株式会社マイネムの「エミーウォッシュ」も面白い。同製品は、コロナ禍ですっかりお馴染みとなった、噴霧式の除菌ディスペンサーだ。しかし、ただの除菌ディスペンサーではない。
「人と社会をつなげる社会装置」というコンセプトの下で開発された、この エミーウォッシュは、笑顔を感知すると除菌液が噴霧される装置なのだ。手指を除菌する際に感知された笑顔が、1エミーは0.5円相当の感謝財emmy(エミー)としてカウントされ、その貯まった「笑顔の貯金」を活用して教育機関などにエミーウォッシュ本体や除菌液が無償提供される仕組みだ。また公共の施設等のみならず、この装置を職場に設置すればSDGsへの取り組みとして報告書へ記載することも可能とあって、設置場所は徐々に全国的に拡がっており、それに伴って笑顔の貯金も毎月増えているという。このユニークな取り組みにはきっと、海外の人たちもニヤリと笑顔を見せずにはいられないだろう。
SDGsへの取組みは、持続可能な社会の実現云々もさることながら、日本の文化や思想、伝統技術などとも融和性が高い。日本独自のユニークなSDGs活動には、日本の魅力や底力を海外にアピールする大きな可能性が秘められている。(編集担当:今井慎太郎)