日本の指導的立場に就いている女性の比率は他の先進国と比べ低いとされている。2019年3月のILO(国際労働機関)の報告書では主要国の女性管理職比率の平均は27.1%、一方日本は12%と半分以下、主要7カ国中で最下位となっている。近年日本では人手不足が深刻で、積極的に女性を管理職に登用しようと努力している企業も増加しているのも事実だ。そこで課題とされるのが日本女性の管理職等への「昇進意欲」の低さで、人事から管理職登用を打診されても、子育て等を優先させたいために長時間労働とされる管理職への登用を辞退してしまうケースが少なくないようだ。こうした課題を解決するためにはどのような改善策が考えられるであろうか。
この点について、パーソル総合研究所が経営・人事への提言を目的に実施した「女性活躍推進に関する定量調査」(調査時期:2021年12月~22年3月、サンプル:5600件)の結果レポートを公表している。分析レポートでは企業を4つのグループに分けている。フェーズ1は女性管理職率が0%の企業のグループ、フェーズ2は10%未満、3は10~20%、4は20%以上の企業だ。全てのフェーズにおいて「企業側が考える女性活躍のための課題」は「女性の昇進意欲がない」が42.4%でトップとなっている。もともと女性に昇進によるメリットがないのか、企業の制度にそう感じさせる理由が存在するのか不明だが全フェーズで共通の課題のようだ。
興味深いのは「昇進意欲」が高いのはフェーズ2(16.9%)、3(16.2%)で、管理職比率0%のフェーズ1(14.3%)と最も管理職登用率が高いフェーズ4(13.4%)が低くなっている。この点について、育児期間にある男女別の昇進意欲の違いが興味深い。女性では育児期間では「勤務時間の重要度」が70%近くまで急上昇するのに対して、男性では30%程度だ。逆に「給与の重要度」は男性では55%程度であるのに、女性では30%以下に急落する。
上席主任研究員の小林祐児氏はこの結果を得て、必要と考える施策を「時間」「経験」「展望」の3つの観点で整理し、「労働時間に上限を設ける『管理型』残業施策より、管理職の時間的負荷を下げる施策」「ステレオタイプによる『期待』と『経験』の大きな男女格差を是正し、早い選抜・登用への転換」「女性活躍施策を戦略的に社内に伝える努力」を挙げている。日本女性は子育て・家庭を重視する傾向があることが多くのリサーチで指摘されている。そうした女性の視点に立った組織的な改革が女性活躍の更なる推進につながりそうだ。(編集担当:久保田雄城)