ミツバチの経済効果は150億ドル超? ミツバチとの共存を目指す活動に注目

2024年06月30日 10:15

3日

ハチが減少すると、多くの野菜や果物が受粉できなくなり、世界の農作物の1/3が失われる恐れがあるともいわれている

 世界的なSDGs活動の高まりとともに、ハチが注目されている。ハチは地球上のすべての昆虫の中でも最も優れた花粉媒介者と言われている。ハチが減少すると、多くの野菜や果物が受粉できなくなり、世界の農作物の1/3が失われる恐れがあるともいわれている。受粉が必要な農作物は、そうでないものの5倍の価値があると言われるほど栄養価が高いものが多い。ハチによる花粉媒介が行われなくなると、そんな栄養価の高い農作物が食べられなくなる、あるいは非常に高価になってしまうことだろう。

 また、ハチは経済面からみても非常に重要な生き物だ。ハチがいなくなると、農地の収穫量が大幅に低下し、世界の主要な農作物の多くが影響を受ける。例えば、アメリカではミツバチは年間約150億ドルもの規模で経済に貢献していると推定されているのだ。

 しかし、そんなミツバチの重要性は世間的にはあまり知られていない。多くの人が持っているミツバチのイメージは「蜂蜜の生産者」だろう。また、針で刺すこともあるため、害虫のように思っている人も多いかもしれない。ミツバチは蜂の中でも比較的おとなしい蜂で、ミツバチ自身や巣を刺激しない限り刺してくることはほとんどない。にもかかわらず、ミツバチの姿を見ただけで逃げ惑う人は多い。

 そんな中、ミツバチは人間の大切なパートナーであるということを、専門家や大学などの研究機関だけでなく、一般の人たち、とくに未来を担う子どもたちにも知ってもらおうという活動が近年、日本でも盛んになっている。

 例えば、養蜂業大手の山田養蜂場では、自然環境の大切さや人との関わりを感じられるミツバチを描いた一枚画を国内外から募集する「ミツバチの一枚画コンクール」を開催している。ミツバチを通して見えてくる大切なことを応募者と共に考えたいとの想いで2013年から毎年開催しており、今や、応募総数が国内外合わせて約23万点にものぼる大規模なコンクールに成長している。子どもたちの自然環境の教育の場としても有効的に活用されているようで、昨年度は1062団体からの応募があった。団体の代表者や先生方からは「ミツバチと自然環境のつながりを知り、理科の単元への理解も深まっています(小学校教諭)」「美術の授業で今回の絵画制作に取り組みました。併せてSDGsについても学ぶことができました(中学校教員)」などの感想が寄せられているという。今年度の募集もすでに始まっており、7月15日が締め切りとなっているので、ぜひ応募してほしい。

 また、神奈川県の横浜市では、学校法人岩崎学園の専門学生が中心になって小学生、高校生、地域の人たちとともに、横浜駅周辺での都市型養蜂を目指す「IWASAKIみつばちプロジェクト」を2022年の9月に始動している。昨年からは、横浜市に住む小学生も活動に参加して、本格的な養蜂にも挑戦しており、今後の展開が楽しみだ。

 もちろんミツバチだけでなく、人間の健全な生活は多くの生き物との共存関係の上に成り立っている。一つの種が減少したり、絶滅したりすることで生態系が崩れ、その影響は人々の生活や経済にも大きな影響をもたらす。世界的なSDGs活動の高まりによって、持続可能な社会の重要性の認識は広まりつつあるものの、その一つ一つの課題への対策は、直面する脅威に追いついていないのが現状だ。まずは、「ミツバチの一枚画コンクール」や「IWASAKIみつばちプロジェクト」のような活動に参加してみるところから始めてみてはいかがだろうか。(編集担当:藤原伊織)