経団連が7月12日に発表した17業種97社の大手企業の2024年夏のボーナス妥結状況(第1回集計)の加重平均は、98万3112円で、前年比4.31%増と高水準となった。3年連続で夏のボーナスが前年を上回っており、月例賃金の引き上げがボーナスにも反映されており、物価高を背景とした賃上げ機運が加速している。
今回のボーナスの増加は、企業の好業績も大きく影響している。
例えば、昨年3月に商号を「株式会社アキュラホーム」から変更した株式会社AQ Groupは、2024年夏季賞与の平均支給額を前年同期比約33%増で支給している。同社は、不動産市場全体で新築着工戸数が低下する中、住宅建築事業における前年比約35%増となる過去最高の売上高689億円を達成。全社における営業利益も前年比26億円アップと絶好調で、この業績が社員一丸となって実施した積極的な企業活動の賜物ととらえ、それに報いるべく、大幅な賞与増額を決断したようだ。
また、AQ Groupは今期、日本初の純木造8階建て本社ビルを竣工。中小ゼネコンや工務店でも建築できる普及型の中規模木造建築のプロトタイプとして稼働させるなど、SDGsの観点からも注目度が高まっている中規模木造建築市場でも存在感を強めており、木造建築市場ではまさに破竹の勢いを見せている。
また、今夏の平均賞与支給額が641万円にも上ったことが大きな話題を呼んだのが、総合商社の三菱商事だ。同社だけでなく、総合商社は軒並み好業績で、各社の24年3月期連結決算から純利益を見ると、三井物産の1兆636億円を筆頭に、三菱商事が9640億円、伊藤忠商事が8017億円と続いている。他の業界業種と比べても、人が資本という考え方が強い業界ではあるが、中でも三菱商事は社員の給与水準が高いことで知られている上、そもそもインセンティブ要素が大きいこともあり、好業績を如実に反映した超高額な賞与支給となったようだ。
自動車業界ではトヨタ自動車が、同社のボーナスに当たる年間一時金を過去最高となる月給7.6か月分で支給するとしている。同社は、今年の春闘でトヨタの労働組合から提示された、月額で最高2万8440円の賃上げ要求にも満額回答していることから、年収としてみると、かなり大幅なアップとなる。
歴史的な円安や、国際的な原材料価格の上昇を背景とした物価高騰などにより、厳しい生活は続いているが、夏のボーナス支給額からも見えてくるように、多くの企業が利益を社員に還元し、社員とその家族の生活を守ろうと懸命に努力している。そういう企業だからこそ、この厳しい時代に業績を伸ばすことができているのかもしれない。(編集担当:藤原伊織)