今年2022年冬のボーナスの見通しは2年連続のプラスとなる見込みだ。しかし、資源価格高騰や3月からの急激な円安進行の影響で業種や企業規模ごとに収益力に差が生じており、ボーナスの支給額についても企業間格差が鮮明となりそうだ。
11月10日に日本総合研究所が経済・政策レポート「リサーチ・アイ」を公表しているが、これによれば、民間企業の22年冬の賞与の支給総額は前年比で2.5%の増加となる見込みで、一人当たり支給額は前年比1.8%増と昨年に引き続き2年連続でプラスとなる見込みだ。春からの本格的な経済活動の再開もあり、22年度上期の企業収益は大幅に改善し、22年4~6月期の経常利益は前期比5.5%増と4四半期連続で増益となっている。産業別にみると、製造業では受取配当金等の増加により4四半期連続の増益となり、非製造業でも行動制限の緩和に伴う個人消費の回復を受けて対面型サービスを中心に増益となっている。
22年夏の賞与の実績を見ると、民間企業全体で前年比2.4%増と前年21年夏の実績0.8%減から大きく回復している。産業別には、製造業が前年比7.0%増、非製造業が同1.5%増とともに大きな回復だ。冬の賞与についても、民間全体で前年比1.8%増、製造業が同6.3%、非製造業が同0.9%増と前年からの大幅な回復が予測されている。
全体としては景気回復による収益力改善を背景に冬の賞与はプラスとなっているものの、賞与の規模は業種や企業規模によってバラツキが見られる。昨年からのエネルギー・原材料価格高騰に加え、3月からの急速な円安、また人手不足による人件費高騰などでコストが上昇したにもかかわらず、十分な価格転嫁が実現できず収益が圧迫されている企業も中小を中心に多数存在する。特に企業規模での格差は鮮明なようだ。海外展開している大企業では急速な円安で為替差益が発生し、円安は収益にプラスとなったようだが、中小企業では資源高による原材料価格の上昇が円安によって増幅され、このコスト増が収益を圧迫している。
夏の賞与でも既に従業員規模100人以上の企業では前年比プラスであったが、100人未満はほぼ横ばいにとどまっている。資源価格高騰に加え円安の急速な進行により、7~9月期以降も中小企業の業績は下押しされているとみられることから、レポートは「今冬の賞与では企業規模間の格差がさらに広がる可能性」があると見込んでいる。(編集担当:久保田雄城)