日本一の木造耐力壁は? カベワンGP開催。激甚化する日本の家屋に必要なもの

2024年10月26日 11:03

 近年頻発している大規模な地震災害や、近い将来の発生が懸念されている南海トラフ巨大地震や首都直下地震などへの警戒から、住宅市場では、より強い住宅、安心して暮らせる住宅への欲求が高まっている。

 そんな中、木造耐力壁の日本一を決める、年に1度の一大イベント、第7回「カベワンGP(グランプリ)」が10月5日、6日に埼玉県行田市の「ものつくり大学」で開催された。

 カベワンGPは、全国の大学や専門学校、建築関係企業などが参加して、自慢の木造耐力壁同士を戦わせ、トーナメント方式でその強さを競い合う大会だ。2体の木造耐力壁の柱脚を固定し、どちらかの壁が破壊されるまで互いを引き合うという、まさに壁の格闘技大会。全チームが、組み立て、トーナメント予選、本選、解体までを2日間にわたって実施。

 強さはもとより、材料費の安さや加工数の少なさ、組み立て時間や解体時間、デザインなども審査対象となる。

 7回目を迎える今回も、各チームによる白熱した戦いが繰り広げられた。今回のベストバウトの一つは、常連チームであり優勝候補、前回大会でもトーナメント優勝と総合優勝を果たしている強豪「AQチーム匠」と予選から圧倒的な強さを見せつけてきた東京大学木質材料学研究室・網中木材との決勝戦だろう。

 1平方メートルあたり約5トンの力が加わる50kNを超えたあたりで、AQチーム匠の中柱に亀裂が入り、会場からも大きなどよめきの声が上がるも、そこから脅威の粘りをみせた。そして53.5kN前後で東京大学木質材料学研究室・網中木材の耐力壁が破損したことで、辛くもAQチーム匠が勝利を収めたのだ。この勝利により、AQチーム匠は2022年から3年連続でトーナメント優勝となり、耐力壁の強さ日本一の座を守り切った。

 現在、耐力壁最強といえるAQチーム匠は、住宅総合メーカーのAQ Group(アキュラホーム)を主体とするチームだ。今大会に参戦した耐力壁、その名も「相欠きのジャンヌダイク」は、2024年3月に完成したAQ Groupの純木造8階建て本社ビルにも採用されている「相欠き合わせ柱式ラーメン構造」という日本の伝統技術である木材加工技術を大会用にアレンジしたものだ。8階建てのビルを支えるほどの高耐力だと考えると、今回の優勝も納得だ。

 カベワンGPは、前身のイベント「木造耐力壁ジャパンカップ」から数えると今年で27年目だという。大会発起人は、東京大学名誉教授の稲山正弘氏で、1995年に発生した阪神淡路大震災の後にささやかれた「木造は弱い」という偏見を払拭し、耐震技術開発の促進と技術者の育成を目的に1998年からスタートさせた大会だ。以降、大学や専門学校、企業が、この大会を通して「木造の強さ」を研鑽し合ってきたわけだが、今回のAQチーム匠が日本古来の木造技術をベースにした耐力壁で優勝したというのは、実に興味深い。地震大国といわれる日本の家屋に必要なもの、地震災害が激甚化している今だからこそ、日本の木造住宅の「強さ」を、そしてそれを支える職人たちの技を、もう一度見直すべきなのかもしれない。(編集担当:藤原伊織)