日本一の店舗数を誇る「カラオケ本舗まねきねこ」を手がけるコシダカ(コシダカホールディングス JASDAQ<2157>)が、2011年に東京神田の駅前にオープンしたひとり専用カラオケ「ワンカラ」は、連日満室が続く盛況ぶりだ。24室あるピットと呼ばれる専用ボックスには、高性能のマイクとヘッドホンが完備され、まるでレコーディングスタジオで歌うプロ歌手のような気分が味わえるとあって、20~30歳代の若者層を中心に人気で、一人で訪れる中高年層も増えているという。一般のカラオケ店でも一人で利用する人が増えているようだが、「ワンカラ」は一人専用としたことで、ひとりでカラオケに行くことに対して少し恥ずかしいと感じていた層の抵抗を取り除くことに成功し、カラオケ業界全体の店舗数が減少している中、池袋、新宿、渋谷、秋葉原、そして仙台と店舗数を順調に拡大し続けている。
また、東京の上野には一人で焼肉を楽しめる専門店がある。「一人焼肉専門店 ひとり」は、席が完全に一人用に区切られているので、周囲の視線を気にせず、焼肉を楽しむことができる。「焼肉まではちょっと・・・と思っていたけど仕切りがあるので抵抗がなく行ける」「マイペースで食べやすい」などの理由で、若い女性を中心に人気のようだ
最近では、「ひとりしゃぶしゃぶ専門店」や「ひとり鍋専門店」なども登場するなど、一人専門店への需要はさらに高まっているようだ。専門店ではなくてもお一人様用のサービスやキャンペーンを行い、新規客の獲得を狙う企業や店も増えており、飲食・サービス業界にとって「お一人様」向けのサービスは、今や競争を勝ち抜くための重要な戦略のひとつとなっている。
以前から映画鑑賞やショッピングなどは一人での方が楽しみやすいという人は多かった。確かに一人の方が相手に気を使うことなく集中でき、マイペースで楽しむことができるだろう。しかし最近では「一人ゴルフ」や「一人ボーリング」、中には「一人遊園地」を楽しむ人まで増えているという。「おひとりさま」という言葉が誕生した当時は、ひとりでプライベートを楽しむ独身女性のことを表すトレンドワードだったが、今ではひとりでの行動を優先する若者たち全般を表し、コミュニケーションが希薄になった時代を象徴するキーワードになっている。
総務省統計局が公表している最新の国勢調査結果によると、東京23区のひとり暮らしの割合を人口ベースに直すと25%だが、世帯ベースになると2軒に1軒がひとり暮らしとなっている。一人暮らし世帯が増えた要因としては、「未婚化」「晩婚化」と「熟年離婚」の増加など、構造的な問題があるようだ。今後も単身世帯が増えていくことが予想されており、単身者向けのマーケットもさらに広がりをみせていくだろう。家族単位では、何かを購入したり、どこかに遊びにいく場合でも、事前に家族間で相談するケースがあるため、消費行動に抑制がかかりやすい。しかし単身者となると、自分への投資がしやすく、決定権は自分自信にあるので、より直接的に消費行動に結びつきやすい傾向にある。今後、国内の冷え込んだ消費に刺激を与えてくれるのは、まさしくこの「おひとりさま」たちなのかもしれない。(編集担当:北尾準)