不登校支援を企業が担う時代へ 日本総研が制度拡充

2026年04月08日 12:00

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日本総研が「子ども休暇」を不登校・発達支援に拡大。中学生まで対象引き上げ、家庭の悩みを“経営リスク”と捉える新戦略

今回のニュースのポイント

子ども休暇の対象を中学3年生まで拡大:従来の「小学校卒業まで」から多感な時期である中学校3年生の3月末までにサポートを広げました。

「不登校・発達に関する支援」を正式な取得事由に:子の心身の不調に伴う看護や発達に関する支援への付き添いなどを休暇理由として明確に認めました。

時間単位での柔軟な取得が可能:年次有給休暇とは別に一子につき年度内5日(3歳以下は10日)を時間単位で取得できる仕組みを維持・拡充しています。

人材確保と離職防止を企図:不登校や発達支援を理由とした親の離職を防ぎ、社員のウェルビーイング向上と人的資本経営を推進する狙いがあります。

 日本総合研究所は、子育て世代の社員を支援する「子ども休暇」制度を改定し、対象をこれまでの小学生から中学校3年生の3月末までに延長するとともに、不登校や発達に関する支援にも対応できるよう事由を拡充しました。一見すると手厚い福利厚生の拡充ですが、その背景には「家庭の問題が企業の人材リスクに直結する」という労働市場の変化への対応があるとの見方もあります。

 今回の改定では、不登校や発達に関する支援といった、子どもの成長やこころのケアに関わる場面も正式に休暇取得の理由として認められました。年次有給休暇とは別枠で時間単位から取得できる仕組みを整えることで、急な相談機関への同行など短時間のケアにも対応しやすくしています。

 背景にあるのは不登校の増加という深刻な社会問題です。小中学校の不登校児童生徒数は2024年度に約35.4万人に達しており、特に中学校入学時に急増する傾向があります。しかし公的支援や企業の両立支援は小学校低学年までに偏りがちで、中学生以降へのサポートは「空白地帯」となっていました。不登校をきっかけに保護者の約6人に1人が退職したという調査結果もあり、人材が離職や休職に追い込まれるケースが生じているのが実態です。

 ここで見えてくる本質は、かつては「個人の事情」とされていた家庭問題が、いまや「社員の離職・戦力喪失」を招く「企業の経営リスク」へと転換している構造です。企業が休暇制度でこれらに対応するということは、いわば「家庭リスクの企業内化」を意味します。家庭での困りごとを組織の制度として吸収・調整しなければ、もはや人材を守り抜けない段階に入っているとみられます。

 日本総研は「社員のウェルビーイング向上」や「人的資本経営」を目的として掲げていますが、同時に採用競争での優位性確保や生産性の維持といった、企業側にとっての合理的なメリットも意識しているとみられます。休職や突発的な退職を招くよりも、制度を柔軟に使いながら働き続けてもらう方が、企業にとっても長期的な利益にかなうと考えられるためです。

 今後こうした動きは他の企業にも徐々に広がりつつあり、人材獲得や離職防止をめぐる「制度面での競争」が一段と意識される可能性が高いでしょう。企業の役割がどこまで教育や福祉の領域へと広がっていくのか、その境界線の再定義が始まっています。「家庭の問題はもはや企業の問題でもある」という現実は、これからの日本企業のあり方を大きく変えていくことになりそうです。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)