AI・EV需要が電子部品を加速 村田製作所が示す産業の変化

2026年04月08日 19:41

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村田製作所がコンデンサ増産へ。AIサーバー・EVの「電力制御」が新たな主戦場。1台2万個の需要が変える産業構造

今回のニュースのポイント

村田製作所がコンデンサ事業を強化:世界シェア首位のMLCCについて、出雲村田製作所などの新生産棟完成に加え、AIサーバー向け技術ガイドを公開するなど、供給・技術の両面で体制を拡充しています。

AI・EV向け需要の爆発的拡大を見込む:AIサーバー向けMLCC需要は、2030年度に2025年度比3.3倍へ拡大すると予測。年平均に直すと約30%前後の高い成長率が見込まれています。

電子部品は全産業の基盤:スマホからAIサーバー、EVまで、デジタル化が進むほど「電気を蓄え、制御する」コンデンサの重要性が増しています。

供給体制の強化が加速:中長期的な需要増を前提に、国内外での工場新設や先端品へのシフトを進め、日本企業の競争力を維持する狙いがあります。

 村田製作所が積層セラミックコンデンサ(MLCC)の生産能力強化と技術情報の提供に注力しています。目立たない存在ながら極めて重要なこの電子部品が、いまやAIサーバーやEV(電気自動車)、データセンターといった次世代産業の「電気の心臓部」として、その存在感を急速に高めています。なぜ、これほどまでに小さな部品が重要視されているのでしょうか。

 その背景にあるのは、AIやEVがもたらす圧倒的な電力負荷の増大です。例えば、高度な計算を行うAIサーバーは、従来のサーバーに比べて5倍から10倍の部品が必要となり、1台あたり1万個から2万個ものMLCCを搭載するとの説明もなされています。EVにおいても、自動運転(ADAS)や車内インフォテインメントの高度化により、搭載されるコンデンサの個数と総容量が急増しています。

 ここで見えてくる本質的な構造変化は、「デジタル化の進展=電力制御ビジネスへの転換」です。社会のデジタル化が進むほど、あらゆる機器は大量の電力を「どこに・どれだけ・どのタイミングで」流すかという電力制御の精度に性能が左右されるようになります。コンデンサは、電気を蓄え、ノイズを抑え、瞬間的な電流変動を平滑化する役割を担っており、いわば「デジタル社会の電力インフラの要」なのです。

 さらに、需要は「量」だけでなく「質」の面でも進化しています。村田製作所はMLCC市場で世界シェアトップの地位を持ち、とりわけインフラや車載、通信などの先端品分野で高いシェアを有しています。EV向けでは高電圧に対応した高信頼性製品の量産を進めるなど、高性能化・小型化の両立が新たな付加価値を生んでいます。個数が増える「量」の拡大と、先端品への置き換えが進む「質」の向上が同時に起きる、二重の需要増が現在の電子部品市場の正体です。

 この動きは、日本企業の競争力とグローバルなサプライチェーンの重要性を改めて浮き彫りにしています。AIサーバーやEVの生産は、先端半導体だけでなく、コンデンサや電源モジュールといった「縁の下の部品」の供給制約によって簡単にボトルネック化しかねないことを、世界が再認識し始めています。

 今後、AIインフラの世界的な増設やEVのさらなる普及、半導体の高性能化と歩調を合わせ、コンデンサの役割は一段と重くなっていくでしょう。小さな電子部品の需要動向は、社会全体のデジタル化と電化が、より深く、より広範なフェーズに入ったことを最も早く映し出す指標といえそうです。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)