今回のニュースのポイント
三菱ケミカルが核融合炉向け新材料の共同研究を開始:筑波大学、東京理科大学とともに、核融合炉の重要機器である「ダイバータ」向け新規炭素複合材料の開発および評価・実証に関する共同研究を開始しました。
極限環境に耐える「ダイバータ」材料の開発:プラズマの熱や粒子が集中する過酷な環境下で使用されるダイバータ向けに、2,000℃超の耐熱性と高い熱伝導性を両立した材料の開発を目指します。
従来のタングステンが抱える課題:国際協力実験炉(ITER)で使用予定のタングステンは、連続運転に向けてさらなる耐熱性や耐プラズマ性の向上が課題とされています。
核融合の実用化は「材料」がボトルネックの一つ:発電の仕組みの確立に加え、極限環境に耐えうる材料の開発が、実用化の行方を左右する大きな課題となっています。
「地上の太陽」とも称される核融合発電は、次世代のクリーンエネルギーとして世界的に注目されており、商用化をめざした技術開発が各国で加速しています。核融合発電は原理的には成立するとされる一方で、長年にわたり実用化が期待されながらも実現に至っていない背景には、発電の仕組みの確立に加えて、極限環境に耐えうる材料の開発が重要な課題の一つとなっています。2026年4月10日、三菱ケミカル株式会社が筑波大学および東京理科大学と開始した共同研究は、まさにこの核融合の実用化に向けた「材料」の壁にアプローチするものです。
核融合炉において、重要機器の一つである「ダイバータ」は、プラズマから放出される熱や粒子が集中する極めて過酷な環境下で使用されます。ダイバータは炉内でも特に熱負荷が集中し、損耗リスクが高い部位とされており、長時間の連続運転に耐える材料の確保が不可欠です。現在、国際協力実験炉(ITER)のダイバータ材料にはタングステンが使用される計画になっていますが、連続運転に向けては、さらなる耐熱性や耐プラズマ性の向上が課題とされています。また、タングステンは海外依存度が高く、将来的な供給安定性の観点からも代替材料の開発が求められています。
今回の共同研究で目指すのは、炭素複合材料を基材とし、そこに高融点金属を含浸させることで、ダイバータに求められる2,000℃超の耐熱性と高い熱伝導性に加え、必要な耐プラズマ性能を付与することです。従来の炭素複合材料は、1,000℃を超える耐熱性と高い熱伝導性を有し、すでに様々な産業分野で活用されています。この研究では、三菱ケミカルが材料開発、筑波大学が耐プラズマ性能評価、東京理科大学が金属含浸技術の選定・開発という役割を担い、社会実装を目指します。
核融合の実用化では、プラズマ制御などの課題に加え、極限環境に耐える材料技術が大きなボトルネックの一つになっています。 AIの普及に伴う電力需要の増大や脱炭素社会の実現に向けて、安定したベースロード電源としての核融合への期待は高まっています。その実用化のスケジュールを検討する上では、炉の設計のみならず、過酷な環境に耐え抜く素材の進化が重要な鍵となります。
この新規複合材料は、核融合炉の用途にとどまらず、宇宙往還機や超音速機の熱シールド材などへの応用も可能であり、核融合分野および航空宇宙分野等に幅広く展開可能な、日本発の先進材料として期待されています。材料技術で主導権を握ることは、将来のエネルギー分野のみならず、極限環境向けの高機能素材市場においても日本企業の強みを発揮するチャンスとなります。見えにくい領域でのこうした地道な材料研究こそが、将来のエネルギー構造を左右する重要な要素の一つとなり得ます。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













