今回のニュースのポイント
ポーランド・クラクフ市電で電力最適化の実証を開始:三菱電機株式会社は、鉄道運行の省エネを支援する「鉄道EMS(エネルギーマネジメントソリューション)」において、デジタル基盤「Serendie®(セレンディ)」を活用した実証を2026年4月から開始します。
蓄電システム(ESS)による電力の有効活用:ブレーキ時に発生する「余剰回生電力」を蓄電池に貯め、加速(力行)時の他の車両へ供給する仕組みなどを検証し、消費電力の削減と架線電圧の安定化を目指します。
次世代蓄電モジュール「MHPB」を投入:実証には、武蔵エナジーソリューションズ株式会社と共同開発中の、高い出力密度を持つ次世代蓄電モジュール「MHPB」を搭載した蓄電システム(ESS)を使用します。
経済産業省の補助金事業に採択:本実証は、ウクライナ復興支援や中東欧諸国との連携強化を目的とした、経済産業省の「令和6年度補正グローバルサウス未来志向型共創等事業費補助金」を活用して実施されます。
三菱電機株式会社がポーランドで鉄道の電力最適化に向けた実証を開始します。背景には、急速な経済成長による電力需要の高まりや世界的なエネルギー価格の高騰、そして鉄道事業者におけるカーボンニュートラルへの対応という切実なニーズがあります。
今回の実証は、ポーランド共和国クラクフ市電において、2026年4月から2028年9月まで3段階にわたって実施されます 。まず自社デジタル基盤「Serendie®(セレンディ)」を用いて電力消費や余剰回生電力の実態を分析し、蓄電システム(ESS)の最適な設置場所を特定します。最終的には、次世代蓄電モジュール「MHPB」を搭載したESSを沿線に設置し、回生電力の蓄電と他車両への供給による「消費電力の削減」と「架線電圧の安定化」を実測で検証します。
背景には欧州、特にポーランドのエネルギー環境の変化があります 。急速な経済成長により電力需要が高まる中、近年の燃料価格の高騰や再生可能エネルギー導入の拡大がエネルギーコストを押し上げており、鉄道運行に必要な電力の抑制と利用効率化が急務となっています。
この取り組みの本質は、鉄道における「エネルギー循環」の構築です。従来の鉄道は電力を消費する側としての性格が強く、回生電力の活用は限定的でしたが、これからは減速時に生じる電力を蓄電して再利用する仕組みが求められています。余剰回生電力を見える化し、最適な需給調整を行うことで、エネルギー効率化そのものをインフラの競争力へと変える狙いがあります。
今回の実証がポーランドで行われる意味は小さくありません。ポーランドは中東欧における都市交通インフラの更新期と脱炭素政策の進展が同時に進む重要な市場であり、実証の舞台としての戦略的価値も持っています。また、日本政府による中東欧諸国等との連携強化を目的とした補助金が活用されており、日本の先進技術を海外展開する官民連携のモデルケースとしての側面も持っています。
この動きは鉄道分野のみにとどまりません。三菱電機の将来的構想には、鉄道で蓄えた電力を沿線地域へ融通することで、地域全体のエネルギー最適化や災害レジリエンス(回復力)の強化に貢献することが掲げられています。
いま問われているのは、実証結果の商用化と他都市への展開です。エネルギー制約が強まる時代において、鉄道の電力最適化は、単なる省エネ対策を超えた「インフラ戦略」の重要な柱として位置づけられつつあります。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













