今回のニュースのポイント
厚生労働省が5日に発表した2026年4月の毎月勤労統計調査(速報・事業所規模5人以上)によると、物価変動を考慮した「実質賃金」は前年同月比1.9%増となり、4カ月連続のプラスを記録しました。基本給にあたる所定内給与が3.4%増と大幅に伸びたほか、パートタイム労働者の時間当たり給与も4.9%増と高い伸びを示しており、賃金の伸びが物価上昇率(1.5%)を上回る状況が続いています。企業のベースアップ効果が全就業形態へ着実に波及しており、日本の所得環境は明確な改善局面を迎えています。
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1.実質賃金は4カ月連続プラス、物価上昇を上回る賃金の伸び
4月の毎月勤労統計調査報告によると、労働者1人当たりの基本給や残業代などを合わせた現金給与総額(名目賃金)は31万2425円となり、前年同月比3.5%増加しました。ここから物価変動の影響を除いた「実質賃金」は前年同月比1.9%の増加となり、2026年1月以降、4カ月連続でのプラス圏を維持しています。
きまって支給する給与は29万9096円(前年同月比3.4%増)、その大半を占める所定内給与は27万7916円(同3.4%増)となり、特別に支払われた給与も1万3329円(同7.4%増)とそれぞれ好調に推移しています。実質賃金指数の水準自体は85.1(2020年平均=100)となっていますが、実質化に用いられる消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く総合)の上昇率が1.5%に落ち着いたことも加わり、賃金の伸びが物価上昇を明確に上回る状況が続いています。2023~24年は歴史的なインフレに賃金が追いつかないマイナス局面が続きましたが、足元の統計データは確実な改善トレンドを示しています。
2.賃上げの中心は「基本給」、共通事業所でも強いベア効果
今回の統計において特筆すべきは、賃金上昇の主役が一時金や賞与ではなく、毎月の固定給である基本給部分だという点です。就業形態計において、きまって支給する給与と所定内給与がいずれも前年同月比3.4%増を記録しただけでなく、フルタイムの「一般労働者」をみても、所定内給与は35万4800円(同3.7%増)、現金給与総額は40万3170円(同3.9%増)と極めて強い伸びを示しています。春闘によるベースアップ(ベア)の効果が、月々の所定内給与の水準を着実に押し上げていることを示しています。
この底堅さは、サンプルの入れ替えによる影響を除いた「共通事業所(前年同月と当月の双方で集計対象となった同一事業所)」のデータからも裏付けられます。共通事業所ベースの就業形態計をみると、現金給与総額は前年同月比3.1%増、所定内給与は2.8%増となっています。たまたま調査対象のサンプルが入れ替わったことで生じた一時的な数字の上振れではなく、日本国内の個々の企業において、実質的な賃金引き上げの動きが広範に広がっている現状が二重のファクトで確認できます。
3.非正規にも広がる波、パートの「時間当たり給与」は4.9%増
賃上げの潮流は一般労働者だけに留まらず、非正規雇用層へも力強く波及しています。
4月のパートタイム労働者の動向において、月間の現金給与総額は11万4921円(前年同月比2.8%増)、所定内給与は11万580円(同2.8%増)となりました。一見すると一般労働者より伸びが緩やかに見えますが、これはパートタイム労働者の月間労働時間が減少傾向にあるという構造的要因によるものです。実質的な賃金率を測るために、所定内給与を所定内労働時間で除した「時間当たり給与」を算出すると、前年同月比4.9%増の1436円と、一般労働者をも上回る高い伸びを記録していることが分かります。
このパート時給の強さは共通事業所ベースでも顕著であり、現金給与総額・所定内給与ともに前年同月比3.8%増を記録しています。慢性的な人手不足に直面する小売業、飲食サービス業、宿泊・生活関連サービス業などを中心に、労働力を確保するための時給引き上げ措置が強力に継続している現状を物語っています。
4.労働時間と雇用の組み合わせ、賃金率上昇による真の所得増
賃金指数の堅調な伸びの背景をさらに精査するため、労働時間と常用雇用の推移を掛け合わせると、足元の所得改善の「質の高さ」が見えてきます。
4月の就業形態計における総実労働時間は139.9時間(前年同月比0.3%増)となり、残業代に直結する所定外労働時間は10.2時間(同0.0%、横ばい)にとどまりました。常用雇用指数は全体で前年同月比1.0%増(うち一般労働者が0.9%増、パートタイム労働者が1.6%増)と雇用創出自体は順調ですが、残業時間そのものはコロナ前の水準まで完全に戻っているわけではありません。
このことは、足元の現金給与総額(名目賃金)の力強い増加が、労働時間の延長や残業代の増加という一時的な負荷によって稼ぎ出されたものではなく、基本給や時給といった「賃金率そのものの底上げ」によってもたらされたものであることを示しています。家計にとっては、拘束時間が増えないままで受取額が増えるという、非常に健全で持続性の高い所得改善が実現しているといえます。
5.まとめ:家計調査にみる「慎重姿勢」を溶かせるか
4月の毎月勤労統計調査は、名目賃金の伸びが物価高を明確に上回り、実質賃金が総合CPI実質化(2.1%増)を含めて購買力改善のフェーズへと完全に入った事実を提示しました。
一方で、この所得環境の改善がただちに個人消費の爆発的な拡大へと直結していない点には留意が必要です。前日に総務省が公表した4月の家計調査では、勤労者世帯の実収入や可処分所得が実質2.3%増と大きく伸びていながらも、二人以上世帯の実際の消費支出は実質0.5%減少(5カ月連続のマイナス)するという「ねじれ」の構図が確認されています。家計は増えた給料をフルに日常消費へ回すのではなく、支出先を慎重に選別している様子もうかがえます。
家計の購買力に改善の兆しがみられる今、今後はこの改善された所得環境という原資が消費者の心理的な慎重姿勢をいつ氷解させ、持続的な個人消費の量的回復へと循環していくかが、日本経済の本格的な自律回復を占う最大の焦点となります。 (編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













