SBIなどが新決済実証 トークン化預金が拓く金融の未来

2026年04月24日 10:53

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証券とお金の動きが「同時」になる トークン化預金による国内初の実証が完了

今回のニュースのポイント

トークン化預金を使った決済の実証が完了:SBI証券、大和証券、SBI新生銀行、BOOSTRY、大阪デジタルエクスチェンジ(ODX)、ディーカレットDCPの6社が、トークン化預金「DCJPY」を用いたセキュリティトークン(ST)の決済検証に成功しました。

証券と資金の同時決済が可能に:ブロックチェーン上のST移転とデジタル通貨の支払いを相互に条件づける「DVP決済」を、実際のトークンを実発行した上で国内で初めて実現しました。

決済リスクと事務負担の軽減:従来の銀行振込による資金決済で生じていたタイムラグや事務コストという、証券業界の長年の課題を技術で解決する道筋を付けました。

金融インフラの本格的なデジタル化へ:ST市場のさらなる拡大に向け、既存システムとの接続や標準化といった商用化を見据えた具体的な課題が抽出されました。

 日本の金融市場において、証券とお金の動きが完全に「同時」になる新たなステージが見えてきました。株式会社SBI証券、大和証券株式会社、株式会社SBI新生銀行、株式会社BOOSTRY、大阪デジタルエクスチェンジ株式会社、および株式会社ディーカレットDCPの主要6社は、2026年4月24日、トークン化預金「DCJPY」を用いたセキュリティトークン(ST)決済の実発行検証が完了したことを発表しました。トークン化預金「DCJPY」を使い、実際のSTとデジタル通貨を発行したうえでDVP決済を検証したケースとしては、国内初の取り組みとなります。今回の成功により、これまで物理的な時間差が存在していた「権利の移転」と「対価の支払い」の仕組みを根本から変え、デジタル証券市場の基盤を再構築する可能性が示されました。

 今回のプロジェクトで技術的な核となったのは、ブロックチェーン技術を用いて発行・管理される「セキュリティトークン(ST)」と、銀行預金と1対1で紐づけられたデジタル通貨「トークン化預金(DCJPY)」の高度な融合です。実証では、ディーカレットDCPが発行したデジタル社債を対象とし、大和証券とSBI証券の間で行われる二次流通取引、およびその後の三次取引を舞台として検証が行われました。決済手段には、SBI新生銀行の預金とトークンを紐づけたDCJPYを採用しています。この実証の最大の特徴は、機上のシミュレーションではなく、実際のSTとデジタル通貨を実発行した上で、ブロックチェーンプラットフォームである「ibet for Fin」と「DCJPYネットワーク」という二つの異なるシステムを連携させ、一連の売買オペレーションが実務として完結することを確認した点にあります。

 特筆すべきは、決済手段としてステーブルコイン等ではなく「銀行預金型」のトークンを選択した点です。民間銀行ベースのデジタルマネーであるDCJPYは、銀行預金としての信用力を維持しつつ、会計処理や既存の規制への対応がしやすいという利点があります。これは中央銀行が発行を検討するデジタル通貨(CBDC)とは異なり、民間主導の利便性を追求した設計と言えます。実証では、まずSTを売り手から買い手にいったん「仮移転」したうえで、DCJPYの移転が確認された瞬間にSTを本移転する、いわばエスクロー型のDVPスキームが採用されました。システム連携によって証券と資金の移転を同期させることで、従来の銀行振込に依存していた際に生じる「ズレ」を技術的に封じ込めました。

 金融インフラの裏側に目を向けると、この取り組みは長年の懸案であった「決済リスクの管理強化」と「事務コストの抜本的削減」という二つの課題に直接的な答えを出していることがわかります。ブロックチェーンとデジタル通貨が組み合わさることで、決済プロセスには「プログラマビリティ」という新たな概念が加わりました。預金の性質を持ちながらプログラムで制御可能なDCJPYを活用することで、これまでは人の手を介して行われていた決済照合や指図処理といった事務フローの自動化が可能となります。これは、単なる一部門の効率化にとどまらず、金融取引の信頼性を高めると同時に、市場参加者のコスト構造を劇的に改善させる力を持っています。デジタル証券が今後、次世代の金融市場の基盤として定着していくためには、こうした決済インフラの本格的なデジタル化が不可欠な前提条件となります。

 今回のプロジェクトの本質は、既存の銀行制度に紐づいた信頼性と、最先端の分散型台帳技術を掛け合わせることで、金融インフラの本格的なデジタル化に向けた具体的な道筋を提示した点にあります。参加各社がコメントを寄せているように、投資家が安心して取引できるインフラの構築は市場発展の生命線であり、この実証はその標準化に向けた大きな一歩となりました。今後は、実証で抽出された「既存の勘定系システムとの接続」や「会計・資金管理の運用の整備」といった実務上の課題を一つずつクリアしていく段階に入ります。

 今後の焦点は、この成功をいかにして「商用化」へと繋げ、市場全体の標準へと押し上げていくかです。計画では、まずは限られた参加者によるスモールスタートを目指して運用モデルの具体化を進め、段階的にシステム連携や運用ルール、役割分担を整理していく方針です。中長期的には、参加主体のさらなる拡大や既存市場インフラとの接続、そして汎用的な決済基盤としての実装が期待されています。金融のデジタル化が、投資家の利便性をどこまで高め、日本の金融市場にどのような変化をもたらすのか。SBI証券らによるこの野心的な挑戦の行方は、今後の金融決済の姿を占う上で、一つの重要なマイルストーンとなりそうです。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)